2018.06.09 08:00

【米朝首脳会談】完全非核化の履行確約を

 予測不能のドタバタ劇を経て、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談が12日、当初の合意通りシンガポールで実現することになった。
 朝鮮戦争以来、北朝鮮の核問題などで激しく敵対してきた米朝の首脳が史上初めて同じテーブルに着き、トップ会談に臨む。最大の焦点は、北朝鮮の完全非核化の方法や行程について、どこまで踏み込んだ合意に至れるかだ。
 国際社会の批判を無視し、核開発を強行してきた北朝鮮に求められるのは「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」である。米のみならず、国際社会が決して譲れない一線だ。トランプ氏は朝鮮戦争の終戦宣言にも意気込む。
 朝鮮半島の和平と安定化は東アジアの繁栄に欠かせず、北朝鮮にとっても国連決議の制裁が解かれ、国益になるはずだ。米朝会談を緊張緩和の契機とするべきだ。
 そうした期待感の半面、会談の行方はなお定まらない。トランプ氏の突然の会談中止通告と、それに慌てた北朝鮮の歩み寄りで再開した事前交渉の中で、新たな不安要素が浮かんできている。
 米は一貫して速やかな完全非核化を迫ってきた。北朝鮮が再三、核放棄の約束を裏切ってきた経過も背景にあろう。一方、北朝鮮は体制保証を絶対条件とし、制裁解除などの見返りを得ながらの段階的な核放棄を主張して譲らなかった。
 だが、いったんは会談中止を表明したトランプ氏は金氏の親書を受け取ると融和姿勢に一転。北朝鮮に対する「最大限の圧力」という警告を控え、非核化を「慌てなくていい」とまで述べ、段階的プロセスを許す可能性を示唆した。
 交渉が北朝鮮ペースに陥れば、非核化は不透明化し、会談は骨抜きになりかねない。非核化の完全な履行の確約と、期限を盛り込んだ実現性のある行程表での合意でなければ、共同文書の作成にこぎ着けたとしても砂上の楼閣と化す。
 米に頼る日本も正念場だ。安倍首相はトランプ氏を訪ね、日本人拉致問題の解決を提起するよう再要請し、その約束を改めて取り付けた。だが、米にとって拉致問題の優先順位は高くなく、金氏にどう届くかは心もとない。
 金氏は韓国との融和を加速させると同時に、後ろ盾の中国、ロシアとの関係強化にも積極的に乗り出している。「日本外し」はあからさまだ。安倍首相は金氏側に会談の秋波を送るものの、「拉致問題は解決済み」とする北朝鮮の説得は一筋縄ではいかない。
 予測困難な首脳間の駆け引きだけに、会談の成果は見通し切れない。約束破りを繰り返してきた北朝鮮への不信感も根強く残る。そうだとしても、日米韓をはじめ関係国は北朝鮮との対話の流れを断ってはならない。少なくとも、米朝会談を朝鮮半島問題の解決に向けた不可逆的な一里塚としなければならない。
カテゴリー: 社説


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