2018.06.08 08:00

【骨太方針案】健全化の覚悟が見えない

 ブレーキを緩めながら、アクセルは踏み込む余地を広げている。財政健全化への覚悟が見えてこない。
 政府が経済財政運営の指針となる「骨太方針」案を示した。
 これまでは2020年度としていた国と地方の基礎的財政収支を黒字化する時期は、5年も先送りして25年度としている。
 基礎的財政収支は社会保障などに必要な経費を借金(国債)に頼らず、どれだけ賄えているかを示す。国・地方を合わせた債務残高は既に1千兆円を超えている。黒字化は再建の第一歩だ。先送りは将来世代の所得をさらに先食いし、つけを回し続けることを意味する。
 新たな目標を達成できるかも見通せない。政府は名目3%超、実質2%前後の高成長が続くことを前提としている。アベノミクスがうまくいった場合の税収増を見込んでおり、経済見通しの楽観論は相変わらずだ。これで財政規律が緩めば、黒字化はさらに遠のく。
 当面の焦点である消費税増税は、予定通り19年10月に税率を10%に引き上げる必要があると明記した。その一方では景気への悪影響を抑えるため、19、20年度当初予算で臨時・特別措置を講じるという。
 14年に税率を8%に引き上げた際は、駆け込み需要とその反動減で景気が減速した。安倍首相は今回、「相当思い切った財政出動」に言及している。当初予算への上乗せであり、一般会計総額で初の100兆円突破も視野に入っている。
 消費意欲の減退を抑える配慮は必要にせよ、増税のために財政出動を繰り返すのでは、いつまでも健全化は見えてこないのではないか。
 社会保障費の膨張を抑える数値目標が見送られたことも危惧する。19~21年度は、高齢化による増加分に相当する伸びに収める方針にとどめ、歯止めを設けなかった。
 政府は16~18年度、3年間で計1兆5千億円程度の伸びとする目安を設定。各年度予算で目安に従って社会保障給付を効率化してきた。
 医療や介護、年金などにかかる社会保障費は削るばかりでなく、実効性ある手当ては必要だ。とはいえ、具体的な数字がなければ規律は緩み、実態に合った制度改革も進まない恐れがある。
 公共事業や防衛費などにも明確な歯止めは設けられていない。秋には自民党総裁選、来年は統一地方選、参院選が控える。与党からの歳出圧力に対応する余地を広げているとすれば、本末転倒だ。
 財政再建の鍵を握る社会保障費は、団塊の世代が75歳に差し掛かる22年に急増が始まる。厳しさを増す財政環境を目前に成長戦略の楽観論を押し出し、不人気政策による「痛み」の説明を避けていては将来に禍根を残す。
 巨額の借金体質は国民の将来不安に直結している。財政健全化は待ったなしの取り組みだ。政府は持続可能な将来ビジョンを示し、説明する責任から逃げてはならない。
カテゴリー: 社説


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