2018.06.02 08:00

【合区解消断念】小手先の策は政治の怠慢

 憲法改正による参院選の「合区」解消を目指していた自民党が、高知など4県の合区を維持した上で、選挙区と比例代表で定数を計6人増やす公選法改正案をまとめた。
 比例代表で、政党が当選順を事前に決める拘束名簿式の特定枠を導入。候補者を出せなかった合区対象県の「救済策」として、代表を上位で処遇するという。
 自民党は改憲4項目の一つに合区解消を位置付け、条文案を決定している。人口を絶対的な基準とせず、改選ごとに各都道府県から1人以上を選出できるようにする内容だ。
 ところが今国会では森友、加計学園問題など安倍政権の疑惑が次々に噴出。自民党は各党に条文案の提示もできていない。選挙公約をほごにし、来夏の参院選での合区解消を断念した形である。
 短兵急な議論の末に2016年の前回参院選から4県に導入された合区には、高知県でも不満が大きい。
 尾﨑正直知事も「日本の政治が都会中心になっていく」と懸念する。「1票の格差」是正に取り組む専門家が言う「1票の不平等とは別に、新たな不平等が生じた」との指摘は県民感情を代弁している。
 ただ、法治国家である以上は、現行の憲法や法制度と不整合をきたさない改善策でなければならない。
 1票の格差是正は、憲法14条の「法の下の平等」が求める「投票価値の平等」に基づく。平等の絶対的基準である人口要件を取り払い、参院選挙区を「地域代表」とする自民党の47条改正案は、14条より優先されていいのか疑問が残る。国会議員を「全国民の代表」と定める43条も残したままでは矛盾する。
 自民党による「救済策」も急場しのぎそのものだ。
 消費税増税に伴う「身を切る改革」を前提に旧民主党政権に衆院解散を迫り、発足したはずの安倍政権下で、定数6増は国民の理解を得られるのか。拘束名簿式の特定枠も、政党より個人の資質を問う非拘束名簿式の理念を損なうという指摘が早くも出ている。
 都市部と地方の人口格差は今後も拡大するだろう。合区自体が小手先の数合わせだが、この救済策も一時の取り繕いにすぎない。
 安易な数合わせが繰り返されるのは、本質的な議論が欠けているからではないか。
 参院は、その存在意義が問われて久しい。衆院の数の暴走を抑止する「良識の府」としてのチェック機能を期待されながら、党議拘束など政党主導の運営が目立ち、衆院のカーボンコピー論がつきまとう。
 参院議員を「地域代表」と位置付けるのならば、なお衆院との役割分担を説き起こす作業が欠かせない。憲法上の「全国民の代表」などとの整合性も根本的に煮詰めなければ、合区解消に温度差がある都市部を含めた国民の理解は深まるまい。
 もっと丁寧な議論を期待する。今後も小手先の策が繰り返されるとすれば、それは政治の怠慢だ。
カテゴリー: 社説


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