2018.06.01 08:00

【佐川氏不起訴】今こそ証人喚問やり直せ

 疑惑が晴れたわけでも、国民を欺いた罪を免れたわけでもない。真相の解明はなお途上だ。
 財務省による「森友学園」への国有地売却問題で、決裁文書改ざんと約8億円の値引きに絡む容疑を捜査していた大阪地検は、佐川宣寿前国税庁長官や近畿財務局の担当者らをいずれも不起訴とした。刑事罰は問えないと判断した。
 安倍昭恵首相夫人らの関与を疑わせる記載を削除した文書を財務省が国会議員に提出していた改ざん問題で、地検は虚偽公文書作成などの容疑で捜査。当時の担当局長の佐川氏らが主導したとみて調べたが、虚偽の内容に変えたとまでは認定できないと結論付けた。
 ごみ撤去費用として約8億円を土地評価額から引いて学園に払い下げた売却に対し、地検は背任容疑を検討した。近畿財務局の担当者らを聴取するなどした結果、自分や学園の利益を図るため任務に違背し、国に損害を与えた―と立証するのは困難と判断した。
 学園との売買契約に国の将来の責任を免除する特約を付けていた点も考慮されたとみられる。学園側はごみ処分のため小学校の開校が遅れれば損害賠償請求も辞さない構えを見せていた。
 不起訴処分になったのは、佐川氏をはじめ、財務省本省や近畿財務局の計38人に及ぶ。地検が捜査対象を広げ、文書改ざんや巨額値引きの事実関係の全容を解明した上で、それぞれの立件の可能性を精査したとみられる。
 だが、公判請求されなかったことで、文書改ざんの詳細な経緯や、安倍首相らの関与、官僚の忖度(そんたく)の有無などについて、地検がどう判断したのかは法廷で明らかにされることはなくなった。巨額値引きの決定経過や妥当性なども不透明な部分を残すことになった。
 ここで改めて認識しておきたいのは、一連の疑惑を解明する本舞台はあくまで国会の審議の場であるという原則だ。捜査の終結で幕引きとはならない。たとえ、起訴されたとしても同じである。
 行政府による公文書改ざんは国民の代表で構成する立法府をだまし、行政監視機能をおとしめる不正行為だ。民主主義の根幹を揺るがす。8億円もの値引きでは、官僚の首相への忖度により、公平公正であるべき行政がゆがめられたのではないかとの疑念が何ら拭えていない。
 疑惑の核心を握る佐川氏は、3月の国会証人喚問で「刑事訴追の恐れがある」と繰り返し、証言を拒み続けた。昨年の国会で自ら「廃棄した」と答えた学園との交渉記録が見つかったほか、佐川氏の国会答弁と整合させるために関係文書を廃棄していたことも新たに判明した。佐川氏の不起訴理由が「嫌疑なし」ではなく「嫌疑不十分」となった要因の一つではないか。
 捜査を理由に、証言を拒める環境はなくなった。国会は直ちに佐川氏を再招致し、仕切り直すべきだ。
カテゴリー: 社説


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