2018.05.30 08:00

【働き方法案】結論ありきでは禍根残す

 安倍政権が最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が、衆院厚生労働委員会での採決強行を経て31日の衆院本会議で採決される。
 働く人の命に関わる過重労働への懸念は拭い去れていない。国会日程を優先する与党による拙速な審議という批判は免れまい。
 法案の焦点は、年収1075万円以上の金融ディーラーなどの一部専門職を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設だ。
 適用された労働者は、自由な働き方ができるとされる一方、残業代を得られなくなる。政府は「働いた時間ではなく成果で評価する制度だ」とするが、法案に成果型賃金は明記されていない。成果が賃金に反映される保障はない。
 これに対し、野党側は「残業代ゼロ」「過労死が確実に増える」と削除を求めている。
 現行の労働基準法で、高プロと同じく労働時間規制の適用除外とされている管理監督者にも過労死が起きている。今月、2015年に死亡したテレビ朝日の50代男性プロデューサーが労災認定されたのは、その一例だ。
 規制の枠を外せば、いくら自由といったところで仕事の内容や企業側の都合で長時間労働を強いられる。過労死を増加させかねないという懸念は当然だ。
 与党は、日本維新の会や希望の党と法案の修正で合意。労働者が経営者と同意して高プロを適用された後でも、撤回して元の働き方に戻れる手続きを盛り込んだ。
 ただし、経営者と比べて労働者の立場が弱いわが国では、撤回を申し入れにくい状況は容易に想像できる。実効性を疑問視する声は多い。さらに言えば、「撤回」を盛り込むこと自体が制度の危うさを物語っている。
 そもそも法案に関しては、厚生労働省によるずさんなデータ処理が数多く発覚。裁量労働制の適用業種拡大が既に削除されるなど、「改革」の根拠が揺らいでいる。
 データ問題の影響で法案提出が1カ月半遅れた国会での審議も、厚労省の不祥事や高プロに集中。残業時間の上限規制や、非正規労働者の処遇改善といった重要な論点はなおざりになっている。
 過労死が相次いで社会問題化し、長時間労働の是正が急務であることは間違いない。しかし、共同通信の世論調査では法案の今国会の成立は「必要ない」とする意見が68・4%を占めた。
 安倍晋三首相が「働き方改革国会」を掲げた今国会は、森友、加計両学園と自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)という「三大疑惑」が噴出した。安倍政権の信頼性が問われる中で、法案への国民の理解も進んでいないということだ。
 政府・与党は強行を辞さない姿勢を改めるべきだ。説明と議論を尽くさないまま「結論ありき」で進めるやり方では、将来に禍根を残す。
カテゴリー: 社説


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