2018.05.29 08:00

【米の車輸入制限】一方的で筋が通らない

 トランプ米政権が、自動車や自動車部品の輸入関税を引き上げる輸入制限の検討に入った。
 米紙は25%の高関税を課す可能性を報じている。報道の通りなら、現在2・5%の関税の日本車は大打撃を受ける。
 あまりにも一方的だ。しかも、輸入増が安全保障上の脅威になっている場合に是正措置が取れる米通商拡大法232条に基づく対応という。自動車の輸入のどこが安全保障上の脅威になるのだろうか。
 米国は既に同じ理由で3月から、鉄鋼などに高関税をかけている。こんな筋が通らない政策が許され続けるのなら、車や鉄鋼に限らず世界の自由貿易は成り立たなくなる。
 日本政府は適用除外を働き掛けていく方向だが、欧州などと連携して強く抗議すべきではないか。輸入制限に踏み切らないよう求めていく必要がある。
 米商務省によると、米国が昨年、日本から輸入した自動車や部品は計559億ドル(約6兆1千億円)だった。一方で、日本への輸出額は約24億ドルにとどまる。
 米国にとって最大の貿易赤字国は中国だが、続くメキシコ、日本、ドイツの3カ国は主要な対米輸出品目が自動車である。日本の自動車メーカーは米国での現地生産を拡大してきたが、対米輸出が収益を支えているのは事実だ。
 貿易赤字削減を重視するトランプ大統領はこうした状況に、「日本の自動車市場は閉鎖的」と批判してきた。日本が輸入制限の標的になるのは避けられそうにない。
 自動車は日本の製造業を代表する基幹産業だ。部品生産など産業としての裾野も非常に広く、高関税によって受ける打撃は鉄鋼やアルミニウムよりはるかに大きい。日本の国内総生産(GDP)が5400億円以上減少するとの試算もある。
 米国のやり方は矛盾に満ちている。そもそも日本の自動車市場が閉鎖的だというトランプ氏の主張には疑問がある。
 現在、米国は日本車に関税をかけているが、日本の米国車への関税はゼロだ。米国車が日本で売れないのは、品質やアフターサービスなどで支持を得られていない面が否定できない。
 「安全保障上の脅威」を持ちだしたことには、日本やドイツなどにとどまらず、米国の与党共和党や業界からも批判が相次いでいる。輸入制限によって米国の消費者も大きな影響を受けるはずだ。
 トランプ政権の動きからは、輸入制限をちらつかせ、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や、日本などとの貿易交渉を有利に進めようという思惑も透ける。いずれにしても秋の中間選挙を意識し、成果を急いでいるのではないか。
 一方的な輸入制限は世界貿易機関(WTO)のルールにも違反する。強引に政策を押し通そうとするトランプ政権に、国際社会は毅然(きぜん)とした姿勢で向き合うべきだ。
カテゴリー: 社説


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