2018.05.28 08:00

【社会保障給付費】未来を見据えた論議急げ

 医療や介護などにかかる社会保障給付費が、2040年度には約190兆円に達することが政府の推計で明らかになった。
 18年度の約121兆円の1・5倍以上に当たる。25年度の推計約140兆円からも36%増える計算だ。
 政府は、「団塊の世代」全員が75歳以上になる25年に向け、消費税税率10%への引き上げなどを柱にした「社会保障と税の一体改革」を進めてきた。旧民主党政権時代の12年、与野党で合意した。
 安倍政権は10%化を2度延期し、いまだ実現させていないが、40年度の推計はさらにその先の増税や給付抑制の必要性さえ暗示する。人口減少や高齢化の現実を改めて深く受け止める必要がある。
 社会保障給付費は、医療や介護、年金、生活保護などの制度に基づき国民に支給されるお金やサービスの合計だ。国や自治体の公費と国民負担の保険料で賄われる。
 40年度に190兆円を確保するには、公費、保険料とも30兆円以上増やす必要がある。簡単に捻出できる額ではなく、国民負担を増やす論議は避けて通れまい。特に介護分野の40年度給付費は18年度に比べ約2・4倍に膨らむ見込みだ。
 厚生労働省によると、65歳以上の人が支払う介護保険料月額は、今年4月から全国平均で6・4%上がり5869円になった。
 これは介護保険制度が始まった2000年当時の2倍余りに当たる。高知県平均は5691円で、やはり開始当時の1・8倍超だ。このまま負担が増え続けるようなら、22年後の制度はとても展望できない。
 40年には人口の3分の1超が65歳以上になり、団塊ジュニア世代も高齢者になる。一方で、15~64歳の生産年齢人口は現在より約1500万人も減る。
 若い世代が高齢者を支える社会保障制度の維持は、財源的にもマンパワー的にも厳しいと言わざるを得ない。介護職員の確保や保険制度の見直し論議も待ったなしだ。
 政府が新たな推計を公表した背景にも国民の危機感の醸成があるようだが、肝心の官邸は、来年10月の消費税税率引き上げさえ慎重姿勢を見せている。与党内にも「議論はまだ早い」という声がある。
 来年の統一地方選や参院選を見据え、国民負担につながる論議はなるべく控えたいとの思惑が透ける。
 社会保障給付費は、国民が安心して生活していくために維持していかなければならない経費だ。財源は景気の動向に左右されず、安定的に確保する必要がある。
 12年に当時の与野党が消費税税率を引き上げ、税収増の一部を社会保障費に充てることで合意したのもそのためだ。重い政策決定である。
 それを目先の選挙対策で延期することは許されない。有権者に理解を得る努力を重ねてこそ政治だ。
 繰り返しになるが、消費税増税も通過点の対策でしかない。未来を見据えた論議が急がれる。
カテゴリー: 社説


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