2018.05.25 08:00

【イラク日報隠蔽】文民統制の緩みを許すな

 シビリアンコントロール(文民統制)の危機的状況をあらためて危惧する調査結果だ。
 防衛省が不存在としてきた陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報が見つかった問題で、防衛省は「組織的な隠蔽(いんぺい)はなかった」と結論付けた。陸自研究本部(現・教育訓練研究本部)など「現場のミス」で幕引きを図る意図が透け、事務次官以下17人も比較的軽い処分にとどめた。
 しかし調査結果は、政治が実力組織を統制できていない現実を浮き彫りにしている。
 イラクの日報を巡っては昨年2月、当時の稲田朋美防衛相が「見つけることはできなかった」と国会答弁した後、統合幕僚監部の幹部に「本当にないのか」と尋ねている。
 統幕幹部らは発言を再捜索の「指示」と認定したが、調査の具体的な実施要領や方針を示さず、結果の確認もしないなど十分に履行しなかった。政治の声が実力組織の末端まで届かなかったわけだ。
 イラクの日報は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽を巡る特別防衛監察のさなかだった翌3月、研究本部の教訓課で見つかった。
 ところが教訓課長らは稲田氏の「指示」を認識しておらず、南スーダン以外は報告する必要がないと判断したという。国会が紛糾する中、なぜ報告不要と判断したのか疑問が残る。事実ならば、信じがたい組織統制の不全というほかない。
 統幕監部は今年2月末に日報の存在を把握したが、小野寺五典防衛相への報告は3月末まで1カ月も遅れている。調査結果は精査や確認作業を行った結果だとしたが、文民統制の機能不全と隠蔽体質はここにも現れている。
 安倍政権の下、安全保障関連法の施行で自衛隊の任務が拡大する中、政治の側にも文民統制への自覚の低さが疑われる事例が目立つ。
 今年4月、野党議員に「国益を損なう」などと暴言を浴びせた幹部自衛官について、小野寺防衛相は当初かばうような発言をし、懲戒処分にすらしなかったのはその一端だ。
 2004年から06年まで続いた陸自のイラク派遣は、あいまいな派遣の仕方で始まった。
 当時の小泉純一郎首相をはじめ政府は活動範囲を「非戦闘地域」と説明した。しかし、実態は宿営地への攻撃が続発するなど自衛隊初の「戦地」派遣だった。4月に公表された延べ約435日分、約1万5千ページに上る日報は、隊員の緊迫した状況がつづられている。
 調査の結論付けはどうあれ、不都合な事実を国会に1年以上も伏せた隠蔽には違いない。情報が国民と国会に正しく開示されなければ、自衛隊の海外派遣の正当性は今後も検証できまい。
 小野寺防衛相は、再発防止策として行政文書の管理や情報公開のチェック体制強化などを示している。文民統制の徹底がなければ防衛省・自衛隊の信頼回復もない。   
カテゴリー: 社説


ページトップへ