2018.05.23 08:00

【「加計」新文書】首相の主張崩れるばかり

 「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」。学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、安倍首相が加計孝太郎学園理事長に話したとされるコメントが愛媛県の公文書に記されていた。
 県が国会に提出した新たな文書に、学園側から県への報告内容として記載されていた。それによると、加計理事長は安倍首相と2015年2月25日に面談したとされ、首相が学園の構想を17年1月20日に初めて知ったと主張してきたこれまでの国会答弁と食い違う。
 安倍首相は加計理事長を「腹心の友」と公言するほどの親密な間柄だ。愛媛県の文書が事実なら、首相の国会答弁が虚偽だった可能性を裏付ける。政権トップが特定の学園の事業認可に向けて後押ししていたとの疑いも招きかねない。
 愛媛の新文書に対し首相は加計理事長との面談を改めて否定する。だが、「総理の意向」などの文書をはじめ次々と「物証」が明らかになる中で、関係省庁に残る文書や愛媛文書の信ぴょう性が高まる一方、首相の主張の信用性は崩れていくばかりだ。
 獣医学部新設の交渉経緯を愛媛県職員が時系列的にまとめた新文書には、学園が首相や官邸への接触に躍起になっていたとうかがわせる記述が並ぶ。
 「官邸への働き掛けを進めるため」として、15年2月に当時の加藤勝信内閣官房副長官を訪ねたほか、同3月には当時の柳瀬唯夫首相秘書官や下村博文文部科学相らと面談。柳瀬氏から資料提出の指示を受けるなどしていたとされ、官邸側が「加計ありき」で手続きを促していた形跡さえ透ける。
 安倍首相と加計理事長が面談した後、学園関係者と柳瀬氏のやりとりが始まり、新学部申請の動きが急加速したような様子が分かる。柳瀬氏は国会答弁で学園の厚遇を否定したが、新文書では15年4月の面会で「なんとか実現を、と考えている」と助言したとされる。答弁の真偽をただすべきだ。
 愛媛県職員の備忘録で、この面談の際に「首相案件」と述べたとされた柳瀬氏は、官邸では「総理」としか呼ばないと国会で否定した。だが、新文書には柳瀬氏が「総理案件になっている」と発言したとの記載がある。首相の関与や官邸の「忖度(そんたく)」への疑念を強くする。
 首相や官邸側が疑惑を否定しても否定しても、それをことごとく覆す新たな文書が発覚する。その度に首相らは明確な証拠も示さず、「記憶にない」といった強弁で押し通す。国民はうんざりしている。その不信感は真相究明がままならない国会にも向けられている。
 加計理事長や柳瀬氏、愛媛県の関係者らの証人喚問は疑惑解明の最低限の入り口だ。政権、与党に拒否する理由はない。文書内容は極めて具体的で、詳細だ。安倍首相をはじめ当事者が誠実に答えれば、解明に時間はかからない。
カテゴリー: 社説


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