2018.05.18 08:00

【3佐暴言処分】文民統制の認識甘すぎる

 実力組織の青年が政治家をののしる風景は、戦前の記憶から日本人を不安にさせる。処分があまりにも軽いことを危惧する。
 政治が実力組織に優越する民主主義の原則がシビリアンコントロール(文民統制)だ。しかし、幹部自衛官が主権者代表の国会議員に暴言を浴びせる異常な事態が起きた。
 防衛省の最終報告によると、統合幕僚監部に勤務する30代の3等空佐が4月16日夜、路上で民進党(当時)の小西洋之参院議員に「国益を損なう」「国のために働け」「ばかなのか」などと罵倒した。
 小西氏が主張する「国民の敵」という発言は認めていないが、これだけでも暴言というほかない。
 防衛省は、3佐を内部規定に基づく訓戒処分とした。免職や減給などの懲戒には至らない軽微な規律違反に適用される処分である。
 処分の理由は品位を保つ義務を定めた自衛隊法違反としたが、果たして品位だけの問題なのか。
 3佐は暴言の動機として、安全保障関連法に反対した小西氏に対し、政府や自衛隊と違う方向の対応が多いというイメージを抱き、「一言思いを述べたいという気持ちが高まった」と説明している。
 法に反対した野党議員を非難したのならば、十分に政治的な動機だ。自衛隊法が定める「政治的行為の制限」への違反を認めないのは理解できない。
 また防衛省は、文民統制は国会と防衛省・自衛隊という組織と組織の関係を律したもので、国会議員と一自衛官の関係を律したものではないと説明。3佐の発言は「文民統制を否定するという評価にはならない」としている。
 しかし、自衛官を名乗り、公の場所で国会議員の政治姿勢を批判したのは、文民統制に反するのではないか。統制される側が事態を矮小(わいしょう)化させたい意図が透けて見える。
 憲法9条に自衛隊を明記しようという安倍政権の下で、統制する側も認識の甘さを露呈している。
 小野寺五典防衛相は、問題の発覚直後、「若い隊員で国民の一人でもあるので、当然思うことはあるだろう」と述べた。憲法学の専門家はこの発言を「自らが統制する側だという自覚が全くない」と指摘。訓戒という処分の軽さも、「その延長線上にある」と批判している。
 防衛省は今、自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題も抱えている。
 陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報は陸自内で見つかりながら防衛相に報告されず、1年以上伏せられた。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報も隠蔽され、やはり防衛相の虚偽答弁につながっている。
 主権者の代表が集う国会の軽視もはなはだしい。文民統制への自覚を欠いた空気が防衛省・自衛隊にあるとすれば深刻だ。
 一自衛官の偶発的な暴言と矮小化すべきではない。国民に不安を抱かせないよう組織の在り方を再点検すべきだ。 
カテゴリー: 社説


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