2018.05.15 08:00

【イスラエル70年】パレスチナとの共存探れ

 イスラエルがきのう、建国70年を迎えた。
 1948年、ユダヤ教徒のユダヤ人が立ち上げた。イスラム教徒であるパレスチナ人も同じ地で国家樹立を目指す中でのことだった。
 これが国際社会を巻き込んで4度の中東戦争を招いたことは周知の事実だ。対立はいまも続いており、70年の歴史は混乱と流血の歴史といってもよい。
 建国記念の日に合わせ、米国のトランプ大統領は昨年表明した通り、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移転した。
 中東に新たな緊張をもたらす愚行だ。東エルサレムを将来の独立国家の首都に位置付けるパレスチナ自治政府は米国を強く非難している。中東和平は暗雲が垂れ込めてきたといえよう。
 地中海東岸は古くからパレスチナと呼ばれてきた。紀元前にユダヤ人が王国を築いたこともあったが、ユダヤ人は長い歴史の中で追放や迫害の対象にもなってきた。
 19世紀末から再びユダヤ人国家をつくる運動が盛んになり、イスラエル建国によって実現する。ところが、今度は多くのパレスチナ人の難民を生むことになった。
 双方の対立は根が深い。特にエルサレムの帰属は核心といえる。ユダヤ教にとってもイスラム教にとっても聖地だからだ。
 イスラエルは1980年に首都に定めたが、エルサレムを国際管理下に置くと決めた国連に従い、国際社会はこれを認めず、各国の大使館もテルアビブに置かれている。
 米国は親イスラエルの姿勢から、95年にエルサレム大使館法を成立させたが、歴代大統領はやはり中東情勢の悪化を懸念し、拒否権を行使してきた。
 国際社会が一致して、問題を封じ込めてきたといってよい。トランプ氏はそのパンドラの箱を開けたことになり、アラブ諸国や欧州各国が一斉に反発したのも当然だ。
 しかも当初はことし末までとしていた移転を5月に前倒しした。秋の中間選挙を意識した動きと受け取られている。米国内のユダヤ人や、親イスラエルのキリスト教福音派の支持を得て共和党勝利を導きたいというわけだ。
 国連総会でも、首都認定の撤回を求める決議案が賛成多数で採択された。国際社会を裏切る行為が自国の選挙対策だとしたら、米国の信頼も地に落ちよう。
 パレスチナ自治区ガザでは、反イスラエルのデモが拡大し、イスラエル軍と衝突して多数の死者が出ている。大使館移転で、衝突がさらに激化する恐れがある。
 米国の大使館移転に追随する動きが中米や東欧に広がっているのも気掛かりだ。このままでは建国80年や100年を迎えても流血の歴史になりかねない。イスラエル自身も深く認識する必要がある。パレスチナとの共存を探り、国際社会もそれを一層、支援すべきだ。
カテゴリー: 社説


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