2018.05.13 08:00

【核合意離脱】内向きの論理を危惧する

 トランプ米大統領が、イランの核開発を制限するため2015年に米英仏独ロ中の6カ国がイランと結んだ核合意からの離脱を表明した。
 合意で解除されたイランへの制裁を再開し、「最高レベル」の経済制裁を科すという。
 イランのロウハニ大統領は米国抜きの合意が存続可能か、欧州などと交渉する方針を示す一方、ウラン濃縮再開を示唆するなど反発を強めている。
 イラン国内では今後、国際協調路線を取ってきたロウハニ氏ら穏健派の影響力が低下し、核合意に不満を持っていた強硬派の発言力が高まる可能性もある。
 トランプ氏の「決断」は、1979年のイラン革命以来、激しく敵対してきた米国とイランが歩み寄ったオバマ前政権の「レガシー(政治的遺産)」を否定。国際的な核不拡散体制を揺るがせ、中東情勢を一層不安定化させる危険を招いている。
 トランプ氏は、前政権が築いてきた国際的な枠組みを次々に壊してきた。核合意からの離脱は、環太平洋連携協定(TPP)や地球温暖化防止の「パリ協定」からの離脱に続く、一方的な約束のほごである。
 英仏独は今回、遺憾の意と懸念を表明する共同声明を発表した。身勝手な「米国第一主義」で国際協調に背を向け、大国の信用を傷つける振る舞いが続いている。
 核合意は、ウラン濃縮などのイランの核開発を10~15年制限し、国際原子力機関(IAEA)の徹底した監視下に置く内容だ。
 これに対し、トランプ氏は16年の大統領選で「最も愚かな」合意の一つとし、その「解体」を約束してきた。問題点として、イランの弾道ミサイル開発を黙認している▽核開発の制限期間が限定されている▽査察体制が不十分―などを挙げ、見直しを強く迫ってきた。
 しかし、IAEAは今年2月、イランは核合意を順守しているとの報告書をまとめている。トランプ氏の主張の根拠は分かりづらい。
 むしろ離脱の背景には、与党共和党の苦戦が予想される11月の中間選挙に向けた政治的アピールという内向きの論理が透けて見える。
 トランプ氏の根強い支持基盤にキリスト教右派の福音派がある。イランと対立するイスラエルの支持を信仰上の義務と考える米国最大の宗教団体だ。
 昨年12月、トランプ氏はエルサレムをイスラエルの首都に認定した。公約を守る「強い指導者」を支持基盤にアピールする姿勢は今回の強硬な離脱とつながる。
 米政府高官は、核合意からの離脱の狙いを「米国の強い立場」を確立することにあったと説明する。米朝首脳会談をにらみ、米国は決して妥協しないという強硬姿勢を北朝鮮に示したという。
 ただし、内向きの論理を内包し、国際的な信頼を失い続けるトランプ政権の手法が交渉にどう作用するかは見通せない。
カテゴリー: 社説


ページトップへ