2018.05.06 08:00

【日銀物価目標】「2%」は現実的なのか

 日銀は黒田東彦総裁の再任後初の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の提示を取りやめた。昨年7月に示した「2019年度ごろ」の旗を降ろした。
 黒田総裁が2013年に就任後、日銀はデフレ脱却に向け、物価2%を2年程度の短期で達成すると掲げ、異例の金融緩和に突入した。だが、思惑通り物価は上がらず、5年間で6回も先送りしてなお実現できないままだ。
 直近3月の上昇率も0・9%にとどまる。アベノミクス下で景気は拡大してきているとはいえ、消費者の節約志向は根強く、企業も将来不安から積極的な賃上げに踏み込めていない。
 そもそも「2%」は現実的な目安なのか。「物価上昇ストーリーは崩れていた」。元日銀理事が指摘するように、筋書き通りにならない誤算の中でずるずると引き延ばしを続ければ、日銀の信頼を損なうとの判断もあっただろう。
 日銀は今回公表した展望リポートでも、18年度の物価上昇率を1・3%に下方修正し、経済情勢の下振れ懸念から19、20年度も1・8%と2%に届かないと見通す。この予測ももはや不透明だ。
 黒田総裁は2%の目標は堅持しつつ「物価の先行きには不確実性があり、数字にだけ過度に注目が集まるのは適切ではない」と述べる一方、現行の緩和政策を維持する方針だ。市場の追加緩和観測に縛られず、長期的な構えで政策を続ける方向に転じたとみえる。
 実現性が見通せない達成時期の削除は当然としても、なぜこのタイミングなのか。なぜ2%にこだわるのか。その説明は乏しい。
 「黒田バズーカ」とも呼ばれる「異次元緩和」の手詰まり感や副作用の拡大に、日銀自らも目を背けられなくなっているのだろう。
 低金利の長期化は銀行の収益を圧迫し、人口減などで悪化する経営環境に追い打ちをかけている。借金体質に漬かる政府の財政規律の緩みも許しかねない。
 日銀が大量購入する国債の保有残高は17年末で12年末の約4倍の約440兆円に達し、なお増えている。景気の下支えのため買い進める上場投資信託(ETF)の17年の購入額は最大の5兆9千億円余に上った。日銀のそうした資産増大は一方で、金利や景気の変動に伴う将来リスクを膨らませる。
 「異次元」政策をどう正常化していくか。その「出口戦略」でも黒田総裁は2%の達成を優先し「時期尚早」との姿勢を変えない。だが、既に緩和縮小に踏み出している米欧から「周回遅れ」の様相まで呈してきている。
 企業業績が上向く半面、深刻な人手不足や、過熱する米中貿易摩擦などへの懸念から景気の先行きへの市場の不安は根強い。景気後退期に備えた緩和策を求める声も上がっている。日銀は「出口」の要請に丁寧に答えなければならない。
カテゴリー: 社説


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