2018.05.01 08:00

【環境基本計画】政府内での矛盾なくせ

 第5次環境基本計画が閣議決定された。環境問題を解決するために、政府がおおむね5年間で取り組む施策の大綱だ。
 策定は2012年の第4次計画以来で、安倍政権下では初となる。地域資源を活用した持続可能な地域づくり▽健康で心豊かな暮らしの実現▽国際貢献―など六つの重点戦略を掲げた。
 太陽光や風力といった再生可能エネルギーを最大限導入してエネルギー自給率を高め、技術開発や雇用の拡大、地域の活性化などにつなげることをうたう。
 一口に環境問題といっても、温室効果ガスの抑制や森林の保全、生物多様性の維持など分野は多岐にわたる。それぞれ複雑な背景や構図があり、解決は簡単ではない。
 経済や社会の発展も同時に図るのがいまの環境対策の考え方だ。過疎や経済の衰退に悩む地方を見れば、その必要性はなおさらである。
 基本計画はこれまでも「環境・経済・社会の統合的向上」を提唱してきた。今回はさらにそれを強化したといってよい。
 しかも、第4次までは環境問題を分野ごとに分けて施策を盛り込んでいたが、今回は横断型とした。一つの施策で複数の分野の解決を図ることを狙うなど、野心的に練り上げた印象が強い。
 再生可能エネルギーを扱う地域の新電力会社の推進や、高知県が力を入れる直交集成板(CLT)など木材の利用拡大も盛り込んだ。目を引く分、政府の本気度が問われる。
 気になるのは環境省が所管する環境基本計画と、経済産業省のエネルギー基本計画の関係だ。双方は密接な関係にあるはずだが、方向性を一つにしているとは言い難い。
 先頃、経産省の有識者会議が2050年のエネルギー戦略の提言をまとめた。同省は現在策定中の新たなエネルギー基本計画に反映させる方針だ。
 提言は再生可能エネルギーの「主力電源化を目指す」とした一方、原発や火力発電も継続する必要性を説いている。
 これでは環境基本計画の内容に懐疑的にならざるを得ない。政府が、原発や石炭火力発電の輸出を推し進めていることも理解に苦しむ。政府内の矛盾をなくさなければ、国民の信頼も国際的な評価も得られないだろう。
 環境問題は地球規模での対応が待ったなしの状況にある。
 15年、国連加盟国は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に同意し、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」も締結された。「米国第一」を掲げるトランプ米大統領の動きは気掛かりだが、今後も国際的な連携が強く求められよう。
 新たな環境基本計画はこうした動きを重く捉え、「新たな文明社会を目指し、大きく考え方を転換(パラダイムシフト)していく時に来ている」と力説している。まず政府のパラダイムシフトが急がれる。
カテゴリー: 社説


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