2018.04.30 07:40

【大川小津波訴訟】学校防災を再検証したい

 学校は多くの子どもの命を預かる。その責任の重さを改めて問うた判決といってよいだろう。
 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小の児童23人の遺族が、市や県に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁が14億3千万円余りの支払いを命じた。
 大川小は津波ハザードマップの浸水予想区域ではなかったが、児童74人、教職員10人が犠牲になった。裁判では、校長や市教委が津波を予見できたかどうかが争われた。
 判決は、予想区域外でも「北上川近くにあることから津波の危険性はあり、十分予見できた」と指摘。学校側は対策を怠ったとした。
 津波訴訟は各地で起きているが、企業や学校の震災前の過失が認定されるのは初めてだ。しかもハザードマップを超えた高いレベルの安全対策を求めた。今後の学校防災の在り方に一石を投じそうだ。
 判決によると、地震発生後、児童はまず校庭に避難した。津波発生を知らせる市の広報があったが、教職員は高台への避難決定に手間取り、児童らは津波に襲われた。
 裁判で遺族は、津波は予見でき、学校側は危機管理マニュアルの見直しも不十分だったなどとして賠償を求めた。学校側は、浸水予想区域外にあり、津波避難場所にも指定されており、予見は不可能だったと反論していた。
 一審の仙台地裁は、賠償を命じたが、認定した過失は教職員の避難誘導にとどまっていた。これに対し、控訴審判決は過失の対象を大きく広げた。
 浸水予想区域は「区域外に津波が来襲する危険がないことを意味していない」と指摘。津波ハザードマップについて教職員は「独自の立場から信頼性を検討することが求められていた」とした。
 その上で、学校は安全な避難場所や経路を定めるべきで、市教委はそれを指導する義務があったと結論付けた。市が大川小を津波避難場所に指定していたことも「誤りだった」とした。
 東日本大震災の大きな教訓は自然の脅威を過小評価してはいけない、ということだ。大川小の悲劇もそれを示している。
 今回の司法判断により、学校防災に一層の強化を求める声が強まるのは必至だ。学校関係者からは戸惑いの声も聞かれるが、「想定外」による子どもの犠牲を繰り返してはならない。学校防災の在り方を再検証するきっかけにしたい。
 東日本大震災では、想定外の津波が襲来する中、いち早い避難行動で大半の児童生徒が難を逃れた岩手県釜石市の例がある。「釜石の奇跡」と呼ばれる。大川小と単純に比較してはならないが、防災体制や防災教育の重要性を痛感する。
 「釜石の奇跡」では、小中学校間や学校と住民の連携も注目された。学校防災の強化には、避難の方法や課題などについて地域との共有が大切であることも忘れてはならない。
カテゴリー: 社説


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