2018.04.29 08:00

【セクハラ処分】「女性活躍」の姿勢を疑う

 女性記者へのセクハラを報じられて財務事務次官を辞任した福田淳一氏について、財務省がセクハラ行為があったと認定した。
 6カ月の減給20%の懲戒処分に相当するとし、減給分の141万円を差し引いた上で、退職金5178万円を支払うという。
 これまで事実認定に慎重な姿勢を見せていた財務省が一転して処分を急いだ格好だ。早期の幕引きを狙う意図が透けて見える。
 福田氏はテレビ朝日の女性社員と一対一で飲食したことは認めたが、セクハラ行為は依然、否定している。財務省は、福田氏から特段の反論・反証がないという理由で事実と認定した。
 疑問が多い。女性記者の訴えをそのまま認めるのならば、福田氏の辞任前に処分できたのではないか。財務省はテレビ朝日以外からも匿名で1件の電話相談があったことも明らかにした。そうであれば、他に被害者はいないのか。さらには、事実を認めていない福田氏は説明も謝罪もしていない。
 テレビ朝日は、財務省に再発防止のための詳細な調査継続と、福田氏本人による謝罪を求めている。当然の反応だろう。
 麻生太郎財務相をはじめ財務省はこの問題でセクハラへの認識の低さや人権意識の欠如を露呈してきた。
 麻生氏は問題が発覚した当初、福田氏への口頭注意で「十分だと思っている」とし、追加の調査や処分はしない考えを示していた。
 その後の外部調査も、財務省の顧問弁護士に委託。女性記者に名乗り出るように呼び掛け、出てこなければセクハラの事実認定はしないという姿勢を見せた。被害者保護の観点を著しく欠いている。
 被害者への配慮を欠く言動も相次いだ。その筆頭も麻生氏だ。福田氏が女性記者に「はめられて訴えられているんじゃないかとか、いろいろな意見がある」と言い放った。
 財務省の矢野康治官房長は「(女性記者が名乗り出るのが)そんなに苦痛なことなのか」と発言。下村博文元文部科学相は、女性記者が福田氏の発言を録音し、週刊誌に渡したことを「ある意味で犯罪だ」と述べ、撤回、謝罪に追い込まれた。
 安倍政権は「女性活躍」や「女性が輝く社会」も看板政策として訴えてきた。政府・与党の中枢がこの程度の認識では政策の本気度を疑う。
 男女雇用機会均等法に基づき、厚生労働省は2006年、事業主に職場でのセクハラ防止を義務付ける指針を策定した。しかし、加害者が取引先など立場が強い場合や、監視が行き届かない職場で起きた場合は、効果が十分とはいえない状況だ。
 その典型例が、範を示すべき中央官庁で起きた。中途半端な調査でふたをしては、有効な再発防止策につながるのかさえ心もとない。
 財務省は森友学園を巡る決裁文書の改ざんや口裏合わせの疑惑も抱えている。麻生氏の責任が引き続き問われるのは言うまでもない。
カテゴリー: 社説


ページトップへ