2018.04.26 08:00

【海賊版サイト】憲法の視点生かす議論を

 この問題では政府が今月13日、接続業者が自主的に遮断するのが適当との見解を示し、3サイトを著作権侵害が深刻で特に悪質なサイトと名指しした。NTTは政府の緊急対策に対応したという。
 海賊版サイトは、漫画や書籍、映画といったコンテンツを著作権者の了解を得ずに無料で読んだり見たりできるよう公開している。若い世代を中心に利用者が増え、政府が悪質とした3サイトによる著作権侵害の被害額は、半年間で約4300億円との推計もある。
 出版業界や漫画家らから、緊急対策として接続遮断に賛成する声があることは理解できる。ただその一方で、多くの法学者らが、憲法に定めた「通信の秘密」を侵害すると見ている。利用者の通信履歴をチェックする必要があるためだ。
 「検閲」につながりかねない対策が、政府主導で進むことを危ぶむ声も少なくない。今回のように政府が悪質と判断しただけで遮断することは、恣意(しい)的な運用を招く疑念が拭えない。
 今回の接続遮断は法律に基づかずに行われた。政府は遮断の法的根拠を明確にするため、法制度の整備を検討するとしている。その議論が本格化しようとする矢先に、接続大手の中でNTTだけが遮断に踏み切ったのは残念だ。
 サイト接続の遮断はこれまで、児童ポルノに限った特例措置として2011年から実施されている。人権侵害の重大さに配慮して、やむをえない措置と認められた。
 その際は、大手接続業者など業界が足並みをそろえて協会をつくり、サイトの公開画像が児童ポルノに該当するか、弁護士ら専門家に判断を求める仕組みを導入した。表現の自由を侵害しないよう、第三者の議論を経ることが大切だ。
 接続遮断という最終手段を取る前に、できることはなかったかも検証する必要がある。
 海賊版サイトの収入源は広告とされる。今回、政府の緊急対策が発表された後、国内のネット広告会社が悪質3サイトへの広告配信を停止した。するとそれぞれのサイトは接続不能になったり、動画再生ができなくなったりして、実質的に閉鎖状態になっている。
 断定はできないが、資金源を断たれたことが閉鎖の一因になった可能性もある。今後、法制化を検討するにしても、できるだけ多様な角度から、幅広い意見を集めたい。その方が国民の関心も高まる。
カテゴリー: 社説


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