2018.04.25 08:00

【PKO武器携行】派遣の正当性が揺らぐ

 南スーダンに国連平和維持活動(PKO)で派遣中の陸上自衛隊部隊が2016年7月、大規模戦闘に巻き込まれる危機に陥り、全隊員に武器携行命令が出されていた。隊員の証言で明らかになった。
 証言した隊員は「戦争のど真ん中。部隊は全滅すると思った」と最悪の事態をも覚悟したという。もはや「戦場」だ。
 部隊が武装警戒を要する状態だったとすれば、停戦合意などを要件にするPKO参加5原則や、海外での武力行使を禁じる憲法9条に抵触しかねない。「戦争」の恐怖を訴える隊員の肉声は、派遣の正当性を根底から揺るがす。
 これまでに公表された部隊の日報には「戦闘」などと記され、現地の情勢悪化が報告されていたことが分かっている。だが「警備の態勢」の部分は黒塗りにされた。
 派遣隊員の証言は、当時の部隊の切迫した様子を臨場感をもって浮かび上がらせる。日報の非開示部分に「戦争」という言葉や、武器携行命令などが記録されていた可能性がある。
 銃撃戦が発生した当時、中谷防衛相は「武力紛争とは考えていない」との説明にとどめ、武器携行命令には言及しなかった。昨年、日報を公表した稲田防衛相も「戦闘」を「武力による衝突」と言い換えるなど強弁を通した。
 だが、隊員が語る現地の実像は「戦闘」「紛争」そのものであり、「戦争」の証言である。防衛省の釈明を覆すだけの具体性と信用性を持つ。命の危機にさらされたPKO派遣の実態が、国民に正確に伝わっていないもどかしささえもがその証言ににじむ。
 戦闘発生当時は、政府が安全保障法制に基づく「駆け付け警護」の初の付与を検討していた時期と重なる。安倍政権が掲げる「積極的平和主義」を優先し、情勢悪化を過小評価しようとしたのであれば、5原則や9条規定をゆがめる行為だ。
 武器携行の発令は、部隊派遣の継続や撤収の判断を迫られていた事態を意味する。文民統制(シビリアンコントロール)の下、国民が派遣の是非を検証するため、政府は説明責任を果たすべきだ。
 南スーダン日報と同様に「不存在」から一転して公表されたイラク派遣の日報も、宿営地への攻撃が多発した時期の報告が抜け落ちていた。派遣隊員が現地情勢をつぶさに記載する日報は当局には永久保存に値する一級資料のはずだ。廃棄するとは考えにくい。
 現に、自衛隊からまた新たに約4万3千件もの日報などが見つかったとして公表された。小野寺防衛相は自衛隊に捜索を指示して出てきたと強調し、統制を利かせたとアピールするが、国民には響くまい。隊員の証言が組織の隠蔽(いんぺい)体質の根深さを告発するようだ。
 国民の検証を可能にする信頼関係があってこそ、自衛隊活動の正当性は確保される。
カテゴリー: 社説


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