2018.04.16 08:40

赤ちゃん会で「長男がつないだ命」かみしめ 高知市の片岡さん

片岡さん夫妻に抱っこされる次男の蒼介ちゃん、三男の航大ちゃん(15日午前、高知市の追手前高=佐藤邦昭撮影)
片岡さん夫妻に抱っこされる次男の蒼介ちゃん、三男の航大ちゃん(15日午前、高知市の追手前高=佐藤邦昭撮影)
 私たちに会いに来てくれてありがとう―。高知市追手筋2丁目の追手前高校で15日に開かれた「赤ちゃん会」。参加した家族それぞれの思いがあふれる会場で、命の煌(きら)めきをかみしめ、2人の男の子を抱く夫婦の姿があった。
 
 同市杉井流の片岡優世さん(37)、裕美さん(39)が結婚したのは2005年。優世さんは、高校生の時の交通事故で下半身不随となり、車いす生活を送っている。
 
 不妊治療を始めた当初、優世さんからは精子が見つからず、福岡県の産婦人科医院を頼るようになった。この病院では、精子が成熟する前段階の細胞を取り出し、体外受精させる治療を行っていた。
 
 それでも着床できなかったり、妊娠の反応があっても心拍が確認できず流産したりと、つらい日々が続いた。
 
 ようやく妊娠が分かったのは、治療開始から5年後。ただ、体が小さく、医師は「無事に生まれてこられるかどうか…」。うれしさの半面、怖さもあったが、命の煌めきを実感させてもらった感謝の思いから名前を「煌(こう)」と決めた。
 
 煌ちゃんは38週目の11年8月に生まれた。裕美さんは母乳を毎日搾り、新生児集中治療室(NICU)の煌ちゃんに届けた。保育器の穴から手を入れ、小さな頭をなでた。
 
 だが、体は小さいまま。酸素をうまく体中に送れず、日に日に容体は悪化していった。誕生から50日後、病院の計らいもあって、優世さんはわが子を初めて抱いた。小さく、軽かった。その手の中で、煌ちゃんは息を引き取った。
 
 涙にぬれながら、裕美さんはわが子を沐浴(もくよく)させた。「苦しかった、しんどかったと思う。生まれてきてほしかったけど、それは親のエゴだったんじゃないかって…」と裕美さん。
 
 優世さんも同じことが起きるのではと心配し、治療を続けるか悩んだが、「煌ちゃんのきょうだいをつくってあげたい」(裕美さん)と2人で前を向いた。
 
 すると、最初の治療では見つからなかった優世さんの精子が採取できた。「お兄ちゃんの贈り物やないか。奇跡や」。煌ちゃんが亡くなってから1年後、裕美さんは新たな命を授かった。
 
 「育ってよ。生まれてきてよ」。裕美さんは毎朝、毎晩、おなかに念じ続けた。13年6月、次男の蒼介ちゃん(4)が生まれた。
 
 「何と言えばいいか、命のかたまり。生まれてくれて、本当にありがとう。感謝しかないです」と裕美さん。昨年11月には、凍結保存していた最後の受精卵で、三男の航大ちゃんが誕生した。
 
 優世さんは、赤ちゃん会の会場で兄弟をいとおしそうに見つめ、言った。
 
 「煌兄ちゃんがいなかったら、蒼介、航大と命はつながらなかった。奇跡の重なりと、仲間や家族の支えがあって今があります」(海路佳孝)



ページトップへ