2018.03.25 08:00

【米中通商摩擦】報復の拡大を憂慮する

 トランプ米政権が、知的財産権の侵害を理由として、中国製品に追加関税を課す制裁措置を決めた。鉄鋼とアルミニウムに高い関税を課す輸入制限も発動した。
 中国は即座に、報復する姿勢を鮮明にした。米国製品への上乗せ関税を準備しているという。
 米の強硬策に、中国外務省の当局者が「とことん戦う」とまで述べた点に注目せざるを得ない。
 世界一、二の経済大国が輸入制限の応酬をする。どちらも強気を崩しそうになく、貿易戦争の様相さえ帯びている。世界経済に及ぼす影響は計り知れない。
 さらにロシアが米からの輸入品に対し、報復措置の準備を検討するという。米に報復しようとする動きが広がれば、自由貿易体制の崩壊につながる恐れもある。
 トランプ氏の強硬策の背景には、貿易赤字のほぼ半分を占める対中国の赤字が減らないことのいら立ちがあるとみて間違いない。秋の中間選挙をにらんで、支持者向けに国内産業の保護策として前面に打ち出そうとしたといっていい。
 だが狙い通りに高関税が米国産業にプラスに働くだろうか。製造業にとっては、輸入品の調達コストに跳ね返ることも考えられる。米製品への関税など報復措置が各国に広がれば、米企業や生産者への打撃となりはしないだろうか。
 国際ルールを無視し、脅しに等しい政策で相手の譲歩を引き出そうとする。そんなトランプ氏の姿勢には疑問が深まるばかりである。
 確かに、中国の知的財産権侵害は各国が問題視してきた。
 今回、米は制裁と同時に中国の知的財産権侵害を世界貿易機関(WTO)に提訴した。一方で米はこれまでWTOに対し、批判的な立場を取ってきたはずだ。その整合性をどう説明するのだろう。
 「自国第一」を押し通す狙いからか、政権から国際協調を重視する人物が外れている点も気になる。
 国務長官を解任されたティラーソン氏の後任となるポンペオ氏、輸入制限に反対し国家経済会議委員長を辞任したコーン氏に代わるクドロー氏は、共に強硬派とされる。トランプ氏に近い人物ばかりでは、波乱要因にもなりかねない。
 中国が準備している報復措置は120品目への上乗せ関税だという。その中に豚肉、野菜など農産品を含めたのは、米共和党の支持層を狙ったものとの見方がある。
 習近平国家主席は、トランプ氏の保護主義に否定的な見方を示してきたはずだ。超大国による輸入制限の応酬は無責任であり、影響が大き過ぎることを自覚すべきだ。
 日本は米同盟国でありながら、輸入制限の対象となった。除外を目指しているが、米に再考を促すためにも国際社会の結束を優先する必要がありはしないか。
 自国の利益のみではなく、自由貿易体制を守るための対応に力を入れなければならない。
カテゴリー: 社説


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