2018.03.12 08:00

【原発事故7年】今も続く「ふるさと喪失」

 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県。中でも福島県の今に続く「痛手」の大きさは際立っている。
 現在も避難生活を余儀なくされている人は約7万3千人いるが、大半の約5万人が福島県民。3県のプレハブ仮設住宅で亡くなった人計1600人余りのうち、約半数も福島が占めている。
 要因はむろん、発生から7年となる東京電力福島第1原発事故だ。
 避難者が多いのは避難指示が出され故郷に帰れなくなったため。仮設住宅で最期を迎えるケースが多いのも、入居が長期化していることが影響していよう。県内自治体の人口減少率も突出して高い。全町避難が続く双葉、大熊両町を含め、7町村で事故前から70%以上減った。
 国は除染により放射線量が低下した地域の避難指示を順次、解除しているものの住民の帰還は進まない。時間の経過とともに、避難先で新たな生活基盤を固める被災者が多いためだろう。しかし、それだけではあるまい。
 民家敷地の表土を剥ぎ取った後も、放射線量が低下しないケースがある。周囲の森林の除染は手つかずのため、河川や風雨によって放射性物質が移動し再汚染される可能性が指摘されている。こうした懸念が拭えない限り、いくら帰還を促されても安心して戻れはしない。
 「ふるさと喪失」。
 原発事故に伴い避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟で、裁判所がこれを名目に慰謝料を上積むケースが出始めている。
 ふるさと喪失とは何か。判決は「生活の本拠や人格を形成、発展させていく地域コミュニティーなどを喪失したことによる精神的苦痛」と捉える。暮らしを根こそぎ破壊する原発事故が、いかに特異なものであるかがよく分かる。
 炉心溶融を起こした1~3号機の廃炉への道のりも遠い。
 ロボットなどによる調査でこれまでに、溶け落ちた核燃料(デブリ)の一部を確認。汚染水対策では、建屋周辺の地中を凍らせて地下水の流入を防ぐ凍土壁が稼働。地下水をくみ上げる井戸などと合わせ、汚染水の発生量は抑えられつつある。とはいえ最難関のデブリ取り出しは、その方法も含めて見通せていない。
 廃炉までにまだ、どれだけの時間と労力と経費をつぎ込まなければならないのか。いったん事故を起こしたら手に負えない原発に頼るのはもうやめよう―。この民意は事故から一貫して変わっていない。
 にもかかわらず国は再稼働を進め、破綻が明らかな核燃料サイクル政策に固執する。原発の建て替えや新増設さえ検討課題に上ってきた。これでは再生可能エネルギーに傾斜する世界の流れにも、ますます置いていかれよう。
 福島の現状を見つめてエネルギー政策を転換する。それこそが最悪レベルの原発事故からくみ取るべき教訓である。
カテゴリー: 社説


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