2018.02.20 08:00

【自民合区改憲案】矛盾と不整合ばかりだ

 「1票の格差」是正のため、隣接県の選挙区を統合する参院選の「合区」解消に向け、自民党の憲法改正推進本部が改憲条文案をまとめた。改選ごとに各都道府県から1人以上の選出を可能にする改憲案だ。
 2016年参院選で「徳島・高知」などに導入された合区は、13年参院選の最大格差4・77倍を「違憲状態」とした最高裁判決を受けた措置だった。憲法14条の「法の下の平等」が求める「投票価値の平等」に基づく。
 地方の人口減少が続く中で合区は全国に広がりかねず、有権者や自治体には「地方の声が国政に届かなくなる」といった不安が強い。16年参院選では自民党をはじめ各党が合区解消を公約に掲げた。
 自民党の改憲案は、衆参両院の選挙区などを「法律で定める」とする47条と、地方自治の原則を記す92条の改正で構成する。
 47条で、選挙区や定数を「人口を基本」とする一方、「行政区画や地域的な一体性」を勘案すると新たに規定。都道府県を意味する「広域地方公共団体」を選挙区とする場合は「少なくとも1人を選出する」との条文を追加する。
 併せて、92条に現行憲法で明文化されていない都道府県と市町村をそれぞれ「広域」「基礎的」と区分する地方公共団体規定を加える。
 投票価値の平等の絶対的基準である「人口」要件を取り払い、参院選の選挙区を実質的に「地域代表」と位置付ける内容だ。一方で、14条も、国会議員を「全国民の代表」と定める43条もそのまま残す。相反を生じないか。
 「全国民の代表」である衆院との二院制の関係性も問われる。議員を選ぶ選挙制度の根本規定を変えるならば、参院の役割や権限もセットで見直すべきだろう。その整合性をどう図るのか。
 国会は、衆院選では1票の格差の違憲判決に従い、区割りや定数の見直しで対応してきた。司法は、衆院選で都道府県に1議席を配分する「1人別枠方式」も格差の元凶と批判し廃止を迫っている。
 自民党の改憲案は矛盾要素をはらむ。司法の審判、判例に堪えられるのか。連立与党の公明党や野党だけでなく、自民党内にも異論が根強くある。
 そもそも、なぜ改憲によらなければならないのか。その必然性や合理性の説明が見えてこない。参院の機能と、定数などの見直しを合わせた法改正でも対応は可能なはずだ。「法律で定める」とする47条にかなう。
 安倍政権が前のめりになっている改憲の実績づくりを急ぐために、合区問題を利用するような議論であってはならない。参院選で人口が少ない改選1人区は自民党に優位という事情がある。改憲議論に党利党略を持ち込むことは許されない。
 参院の在るべき姿とは。その追求と答えの提示こそ優先されるべきである。
カテゴリー: 社説


ページトップへ