2002.02.11 09:00
土佐の果物語(22) 第3部 (6)水分管理 口の中でとろりっ
「山はぬくもりが上昇気流に乗って斜面を上がっていく。実の締まりも何も全然違うねえ。果肉も真っ白ではなく、赤みを帯びる」
この土地の条件がいいかといえば、実はそんなことはないとも言う。
「日照時間は夏場でも五時間、冬場では二時間ぐらい。日受けから何から場所的には不利よ」
それでは何がいいの?
「日照時間も大事だけど、小夏の場合はそれだけではない。水分が一番大事。木の状態を見てそれで判断せないかん」
なるほど。
「ほら、気を付けて。この時季は砂漠ですわ」
一つの畝は幅一・五メートルもないほどで、足元の土はからから。ちょっと油断をすると土がぼろぼろと崩れて、転げ落ちそうだ。
「水分が切れると、小夏の肌(果皮)も、とろりっとする。小夏は味ばかりでなく、口の中に入れた時にすっと、とろけるような状態が好まれる。果肉も(実と実の間の)袋も柔らかいのがいいと聞きます。消費者に好まれるものを作りたい。しかし、何年たっても一年生。えいもんを作るには努力するしかないわね」
そう言って良胤さんは作業に戻った。
「山と露地の小夏の味はまだ超えれん」。そう話す娘婿の勇さん(35)は、平たん地の自分のハウスで「おいしい小夏」作りの研究を続けている。
「昔の味がおいしかったという人がいるんです。花が咲くころまで置いちょった実がおいしかったと。それなら失敗が九割でも、一割の成功を拾えたら…」
良胤さんのように特産果樹を支えてきた先人の経験と、勇さんのように新しいものに挑戦する若い力が高知県の特産品、小夏の将来を支えている。