2002.02.11 10:20
土佐の果物語(14) 第2部 (6)暗雲 手汚れるのが嫌?
「土佐ブンタンには三悪がある。あと五年、十年もつかどうか…」
えっ、余命が五年か十年? ショッキングな言葉に絶句した。いったい三悪って何なの?
「『皮が厚い』『種がある』『はぎにくい』です。今の購入者は土佐ブンタンの味を知っている年配の人が多い。面倒なのを嫌う若い人にはブンタンはマッチしていないんじゃないかな。消費を広げるため、これからは若い人を取り込んでいくことを考えなければならないのに…」
実は土佐ブンタンは供給過剰というやっかいな問題も抱えている。
土佐ブンタンを含むブンタン類の県内での栽培面積、生産量は右肩上がりが続いている。十一年度の四百五十二ヘクタール、九千三百トンは、二十年前のそれぞれ約二倍と約五倍。
「土佐ブンタンの木は寒さに弱いんです。これまでは寒波で木が枯れたりして、生産量がどんどん増えることはなかった。しかし昭和五十六年を最後に寒波もなく、適地以外の栽培も増えて、供給が需要を上回る状態になっているんです」
関係者の多くがそんなふうに指摘する。
県内市場での消費が中心で全国的な知名度がいまひとつなのもマイナス要素だという。県農業技術センター果樹試験場の又川浩司さんが説明してくれる。
「例えばデコポンは全国的に栽培されていて、多くの人が知っているので全国市場でも売りやすい。しかし土佐ブンタンは県出身者とか特殊な購買層がほとんど。しかも皮をむいて、袋を破って食べなければならない。手が汚れる食べ物は嫌がられるという時代の流れも、逆風になっているんですね」
そういえば、量販店関係者も言っていた。
「家庭消費の一個売りが十年前に比べ減っています。グレープフルーツやスイーティーに食われてます。まず家庭で食べておいしいと思ってからでないと、県外には送りませんよね」