2002.02.11 10:50
土佐の果物語(11) 第2部 (3)野囲い 風味高める知恵
「ミカン類の昔からの貯蔵法で、ここでは『野埋(のい)け』と言います」
野埋けとは野囲いとも言い、樹園地に穴を掘り、むしろなどを敷いた後、そこに収穫した土佐ブンタンを山のようにてんこ盛りにする。その上にわらなどをかぶせて、一月から四月ごろまで置いておく。
「冬の温度が低い時もこの中は二-五度。春にはわらが断熱材になって、一〇度以下に保てる。雨水や果実が呼吸することで生じる湿度、地面からの水蒸気がうまい具合に通過して果実が腐らず、皮にも力が残るんです」
大地の力を受けた果実は独特の風味を増していく。
県農業技術センター果樹試験場の樋口洋造・常緑果樹科長にさらに説明してもらった。
「果実にはそれぞれ適した湿度があるんです。温州ミカンと違ってブンタンは湿度が要ります。なければ皮がシワシワになってしまう。野囲いは湿度と温度を自然にコントロールできる。ブンタンは収穫直後は酸があり、独特の風味もまだ出てきてません。貯蔵することで、酸も抜けて舌触りも良くなってきます」
追熟で土佐ブンタンの風味が増すのは学術上でも証明されている。
かんきつ類の香りの研究をしている高知大学農学部の沢村正義教授によると、
「貯蔵することで、土佐ブンタンの中に含まれるヌートカトンという化合物が増加するんです。これが独特の香りを増強させています」
寒害の回避と木の負担を考えてした追熟が風味を高める点でも、ちゃんと理にかなっている。
人間の知恵だなあ。
そうそう、これを読んだ人は、野囲い中の果実は「捨ててある」のではないことが分かったと思います。勝手に持って行ったりしないでくださいね。