2018.02.06 08:00

【名護市長選】基地移設の容認ではない

 沖縄県名護市辺野古への米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設が争点とされた名護市長選は、移設を推し進める安倍政権から支援を受けた元市議の新人、渡具知武豊氏が当選した。
 選挙は、移設反対の翁長知事から支援を受け、3選を目指した現職の稲嶺進氏との一騎打ちだった。
 ただ、この選挙結果をもって、名護市の有権者が辺野古移設を容認したとみるべきではない。
 市議当時、渡具知氏は移設を推進していたが今回は、移設問題への言及を避けたからだ。
 移設は「(国と県が)係争中だ」と述べるにとどめ、是非は明確にしなかった。前面に出したのは教育や福祉の充実、地域振興などである。戦術だろう。
 名護市長選は、1996年に日米両政府が普天間飛行場の返還に合意して以降、普天間移設の是非が争点となり続けてきた。
 98年以降、5回の選挙で移設容認派が3回、反対派が2回、それぞれ勝利している。移設への民意が分かれる中で政府は昨年4月、辺野古沿岸部で護岸工事を始めた。
 移設を巡って政府と県は対立し、法廷闘争に発展した。一昨年12月に最高裁が、辺野古沿岸部の埋め立て承認に対する翁長知事の取り消しは違法だとして、県の敗訴が確定した。県はその後も、工事の差し止めを求めて提訴している。
 どれだけ反対をしても移設の流れは止まらない―。そんな諦めが市民にあっても不思議はない。
 沖縄には「南北問題」もある。那覇市周辺など県中南部が発展する一方、名護市など北部は取り残されているとの感情があるという。
 政府との争いに複雑さを抱えながら、地域振興を待ち望む住民が、渡具知氏の訴えに一定、期待を寄せたのではないか。
 選挙は対立を強める政府・自民党と翁長知事との代理対決の様相も呈した。今年は知事選も予定されている。翁長氏は今のところ去就は明確にしていないものの、選挙結果は知事選に影響しかねない。
 安倍首相は辺野古移設をこれまで通り進める意向を示した。「市民の理解をいただきながら、最高裁判断に従って進めていきたい」と述べている。押し付けにも等しい移設を巡り激しく争った選挙直後である。地元はどう受け取っただろう。
 共同通信が市長選に関して行った世論調査で、渡具知氏の支持層が争点として挙げたのは「雇用・経済振興」「教育・子育て支援」「医療・福祉の充実」が多かった。移設は約1割にすぎない。
 示された民意は、普天間移設問題によって長年、分断を強いられてきた地域の苦渋の判断といっていい。政府は民意の本質を丁寧に探らなければならない。
 稲嶺氏の得票を考慮する必要もあろう。名護市民は決して、移設工事の加速を求めているわけではない。政府はそう受け止めるべきだ。
カテゴリー: 社説

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