2018.02.03 08:00

【支援住宅火災】困窮する高齢者どう守る

 生活に困窮する高齢者らが暮らしていた札幌市の自立支援住宅で深夜に火災が発生した。住宅は全焼、居住者とみられる11人が亡くなった。
 住宅では16人が暮らし、大半が生活保護を受けている高齢者だった。身寄りがなく、1人で食事や入浴ができない人もいた。認知症を患っている人が多かったという。
 住宅は、困窮者の自立支援に取り組む民間団体が運営していた。昼間は職員が常駐していたが、夜間は不在だった。
 亡くなった人は年を重ねた末に落ち着いた住まいで、静かに暮らしていただろう。厳しい冷え込みの中、お年寄りらが犠牲となったのは痛ましいというほかない。
 出火原因や団体の運営実態はもとより、背景にある高齢者の困窮と暮らし、安全確保について対策を考える必要がある。
 旅館だった建物を団体が借り運営していた。木造一部3階建てで1、2階に6畳一間が並び、1人ずつ暮らしていた。築50年近くとされ、老朽化し火の回りが早かったことが惨事につながったとみられる。
 各部屋には石油ファンヒーターが置かれ、火災報知機が備えられていた。スプリンクラーは建物に取り付けられていなかった。
 自力での避難が難しい高齢者が暮らす福祉施設には原則、スプリンクラーの設置が義務付けられている。住宅は「下宿」として届けられており、義務化の対象外だった。
 行き場のない高齢者にとっては、どう住まいを確保するかが深刻な問題となっている。介護施設に入ろうにも、どの施設も空きが少なく、多くの待機者がいる。介護制度に疎かったり、支援の網の目からこぼれたりしている人も多かろう。
 賃貸の物件を借りるなら、契約で保証人が必要となる。家賃の支払い面や病気などを心配する家主は少なくない。保証人を確保できなければ、住まいの選択肢は限られるのが現実といえる。
 困窮者向けにNPO法人などが住宅や施設を運営する場合、住居や設備にお金をかければ、利用料金に反映させざるを得ない。
 高齢者が暮らす施設での火災は度々発生している。札幌市では2010年、認知症の人向けのグループホームで起きた。これを受け、消防庁などが全国で同種の施設を緊急調査し、防火対策を呼び掛けている。
 15年には、困窮する高齢者が暮らす川崎市の簡易宿泊所でも起きている。防火や安全確保で教訓を生かせなかったのだろうか。
 残念なのは今回、札幌市が状況を問い合わせるため、4回調査票を運営団体に送っている点だ。回答がなかったが、この時点で市が手を足しておけばと悔やまれる。
 無届けも含め、高齢者が暮らす施設などは漏れなく早急に実態を把握すべきだ。防火や避難対策を調べ、安全確保を徹底させたい。
 経済的に苦しい人でも、身の安全は保証される社会であるべきだ。
カテゴリー: 社説

ページトップへ