2018.01.30 08:00

【仮想通貨】リスク知った上で取引を

 仮想通貨取引所の運営大手コインチェック(東京)から、約580億円分もの仮想通貨「NEM(ネム)」が流出する事件が起きた。
 不正アクセスを受け、外部に送金されてしまったという。失ったのは全て顧客から預かっていた資産で、被害者は26万人に上る。利用者の衝撃はさぞ大きいことだろう。
 日本では4年前にも仮想通貨の大量消失があった。やはり取引所大手が不正アクセスなどにより、当時のレートで約480億円分の仮想通貨ビットコインを失った。同様の事件は海外の取引所でも起きている。
 仮想通貨のリスクが改めて浮き彫りになった格好だ。公的な規制強化の声が高まるのは必至だろう。取引所の運営企業や業界は再発防止を急がなければならない。
 利用者も注意したい。歴史の浅い仮想通貨には不測の事態がいつ起きるとも限らない。リスクを知った上で取引してほしい。
 仮想通貨は、買い物の支払いなどに利用できる電子データだ。
 専門の取引所で売買し、利用者は取引所に預ける。国や中央銀行が管理したり、価値を保証したりする法定通貨ではなく、価値を信用する利用者によって支えられている。
 代表格のビットコインは10年ほど前に誕生した。銀行を介さずに送金できる利便性が注目され、世界的に広がった。特に日本では利用者が多く、支払いに利用できる飲食店や家電店などが増えている。
 最近では、売買益を得る投資目的での取引も急増しているが、価格上昇が不正アクセスや投資詐欺などを招く原因になっている。犯罪で得た資金のマネーロンダリング(資金洗浄)に使われる例もあり、各国で当局の監視や規制が強まっている。
 4年前の事件後、業界も対応を強化していたはずだ。特にコインチェックは国内大手の一角を占め、幅広い仮想通貨を扱っている。
 にもかかわらずセキュリティーの基本を怠っていた。顧客の仮想通貨を預かるコンピューターをインターネットから切り離す「オフライン」にしていなかった。ハッキングの標的にされて当然だ。
 国内では法改正によって昨春から取引所が登録制になった。金融庁が利用者保護やコンピューターシステムの体制などを審査している。
 同社は改正法施行前から営業しており、登録申請中ながら「みなし業者」として営業を認められてきた。その信頼を裏切ったことになる。
 金融庁は業務改善命令を出した。同社は顧客に日本円で返金する方針を示しているが、利用者保護を最優先に取り組むよう求める。
 国や中央銀行から束縛を受けにくい「通貨」は、裏を返せば、管理や運営が見えにくい。金融庁の審査にも限界があろう。業界は自主的なルールの強化が急がれる。
 仮想通貨の利用者には若い世代が多いという。スマートフォンなどで気軽に売買できるが、常に慎重な取引を心掛けたい。
カテゴリー: 社説

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