2018.01.29 08:00

【一律65歳見直し】安心できる制度が前提だ

 政府は、高齢者への施策の指針となる「高齢社会対策大綱」の見直し案をまとめた。
 大きな特徴は、高齢者を定義する年齢について「65歳以上を一律に高齢者と見る一般的な傾向は、現実的なものでなくなりつつある」と明記した点だ。
 公的年金の受給開始時期を70歳以降とできることや、高齢者の就労促進に向けた施策、各種の数値目標なども盛り込んだ。
 年齢による線引きでなく、働ける人は働いて社会を支える側に回ってほしい―。見直し案から読み取れるのはそんな意図である。
 65歳以上の割合を示す高齢化率は2016年の27%が、60年に40%近くまで上昇するという。働き手である15~64歳の生産年齢人口は、15年からの50年で4割以上も減る見通しだ。支える側が減る一方では、社会は成り立たなくなる。
 高齢者の年齢に関して日本は、国際的な動向に合わせ慣例的に65歳以上としている。65歳を過ぎても働いたり、地域活動に汗を流したりする人は大勢いる。昨年1月には日本老年学会などが、75歳以上とするよう求めて論議を呼んだ。年齢見直しは自然な流れだろう。
 政府は今月中にも新しい大綱を閣議決定し、施策作りに入るという。誰もが安心できる制度とすることを大前提としなければならない。
 雇用や社会保障についての考え方は人によって違う。「生涯現役」として働き続けたい人もいれば、早めにリタイアして自分の時間を大切にしたい人もいよう。給付と負担は人生設計に関わる重要な問題だ。考え方の多様化に合わせ、柔軟な内容とする必要がある。
 公的年金の受給開始は原則65歳で、本人が申し出れば60~70歳の間で選択できる。受給開始を遅らせれば、受給額が一定増える仕組みだが、これを70歳以降まで広げることを検討するという。70歳以降も働ける人は、受給開始の時期と受給額の選択肢が広がることになる。
 就労では、ハローワークに専門の窓口を設け、再就職を支援する考えだ。企業は法で65歳まで雇用を確保することが定められている。年齢や能力などに応じた勤務の形や時間を考えるなど、さらに雇用環境を整える必要がある。
 年金、医療、介護など社会保障費は膨らむ一方だ。予算編成は年々厳しさを増しており、持続可能かは予断を許さないといっていい。元気ある高齢者に「自助」を求めざるを得ないとしても、納得できるよう慎重に進めるとともに、社会の機運を高めていく姿勢が欠かせない。
 危惧するのは、支える側に回ることを強いる雰囲気になりはしないかという点である。経済的に苦しい人や健康を害した人には支援が不可欠だし、社会保障費の削り込みを優先させることは許されない。
 高齢者だけでなく、幅広い世代に関係する問題だ。政府には理解を広げていく努力が求められる。
カテゴリー: 社説

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