2018.01.28 08:35

【いのぐ】高知市「一宮東いのぐ塾」 防災意識どう高めるか

 防災意識の向上に向けた課題を話し合う住民ら(26日、高知市の一宮東小)
防災意識の向上に向けた課題を話し合う住民ら(26日、高知市の一宮東小)
南海トラフ地震に備えるため、東日本大震災で被災した語り部の話を聞き、地元住民同士で語り合う高知新聞社主催の防災イベント「一宮東いのぐ塾」が26日、高知市一宮東町1丁目の一宮東小学校で開かれた。
 
 宮城県石巻市の門脇(かどのわき)小学校の校長だった鈴木洋子さん(67)は一宮東小の児童に地震や津波の恐ろしさを語り、「地震が起きた時に落ち着いて避難できるよう、普段から心の備えをしておいて」と呼び掛けた。同校区内の住民が参加した「語り合い」では、どうすれば防災意識が高まるかなどを話し合った。


訓練参加 低調に危機感
「楽しむ」視点大事に
 「訓練の参加者が少なくて残念だった」。語り合いが始まってすぐ、一宮東小学校区町内会防災協議会の会長、浜渦海南男さん(75)は課題を口にした。
 
 訓練というのは昨年8月に実施した夜間避難所運営訓練のこと。参加者は50人足らずで、浜渦さんは「みんなの意識が薄いのかなと…」。
 
 高知新聞社が同校の保護者を対象に行ったアンケートでも、地元に自主防災会があることを知っている人は4人に1人程度だった。この結果に一宮徳谷地区で自主防災活動に携わる山本浩雄さん(57)も「すごいショック。人任せなところがあるのかな」。同地区は道幅が狭く、ブロック塀の倒壊などで避難路がふさがれる可能性もある。それなのに意識が上がらない背景を「高知県は大きな地震が最近来てないので、意識が薄れるのが早い。訓練に参加する意識を持続してもらうのが難しい」と打ち明けた。
 
 こうした課題は各地で聞かれる。そこで、高知大学地域協働学部の大槻知史准教授(41)が「『べき』論の罠(わな)」という言葉を紹介。防災や教育は「あれをやるべき、これをやるべき」となりがちだが、「べきべきべき」という雰囲気が強くなると「ますます(防災訓練に)行きにくくなる」。「地域の重鎮と子育て世代では考えや大切にしているものは違う」とした上で、例えば自主防災組織がPTAと一緒に訓練を計画すれば子育て世代を巻き込めると説明。花火大会やバザーに併せて訓練をするなど、「楽しむ防災」の観点が大切だとした。
 
 どうすれば若い世代が訓練に参加しやすくなるか? その問い掛けに徳谷地区に住む保育士、松崎遥さん(22)は「訓練に小さい子を連れて行くと『泣いて迷惑ではないか』と思う保護者もいる。託児スペースを設ければ参加しやすいのでは」と提案した。
 
 「子育て世代の意識が薄いという話を胸が痛いと思いながら聞いていた」という同校PTA役員の原田佳恵さん(44)は「自主防とかに行けば何か役割を押しつけられるんじゃないかという不安もある」と子育て世代の心中を吐露。これに大槻准教授が「お母さんたちだけで集まってみるのもいいのでは」と助言。原田さんは「確かに、お母さん同士っておしゃべりが好き。すぐに集まれると思う。パワーもある。何かのきっかけで動きだせば、母は強いですよ」と応じた。
 
 ■  ■
 
 学校や教育が防災の核になり得るとの話題も広がった。門脇小の元校長、鈴木洋子さん(67)は、東日本大震災が発生したのは学校に教員がいる時間帯だったから、学校の避難所運営がうまくいったと振り返る。親子で通学路を歩き危険箇所を話し合う地元の取り組みも紹介し、「子どもと保護者、地域のつながりが大切だ」と呼び掛けた。
 
 一宮東小教諭の角森玄賢(ひろたか)さん(34)は、避難案内を呼び掛ける紙を校舎内に張る作業を児童に担当させたという。「子どもの目線で見やすい場所を考えて張ってくれた」といい、能動的に防災を考える機会が大事と話した。
 
 同校6年の長女、梨琳(りり)さん(11)と語り合いに参加したPTA会長の中島秀文さん(47)は「高知県でも少し揺れる時がある。そんなとき、長女はぱっと動いて非常袋を担ぐ。訓練を繰り返してきたことで無意識に動くことができる」と教育や訓練の重要性を実感したという。
 
 これからどんな取り組みをしたいかと問われた梨琳さんは「親子での起震車体験」を挙げ、理由を説明した。
 
 「もし地震があっても、経験してたら素早く動くことができるから」

 
参加者(敬称略)
鈴木 洋子(石巻専修大学非常勤講師)
大槻 知史(高知大学地域協働学部准教授)
浜渦海南男(一宮東小学校区町内会防災協議会長)
角森 玄賢(一宮東小学校教諭)
山本 浩雄(一宮徳谷自主防災会会計)
松崎  遥(保育士)
中島 秀文(一宮東小学校PTA会長)
中島 梨琳(一宮東小学校6年生)
原田 佳恵(一宮東小学校PTA役員)
石川 浩之(高知新聞社地域読者局次長)=司会


一宮東小校区
 
高知市の北東部に位置する一宮東小学校区は人口約6千人の住宅地で、地震火災の発生が懸念されている。
 
 この地区は高知新港から直線距離で約8キロと離れているが、最大クラスの地震が起きた場合、校区南部(海抜0~2メートル)は最大で2~3メートル浸水し、避難が困難となる30センチの津波が到達するのは、南部の一部で「40~60分」、他のほとんどの地区で「60分以上」とされる。
 
 1707年の宝永地震でも津波は一宮地区に到達。土佐藩士が書いた記録によると、現在の土佐神社の隣にある30番札所・善楽寺にあった「仁王門」まで津波が来たとの記述がある。

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カテゴリー: 社会いのぐ災害・防災高知中央


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