2018.01.27 08:30

高知ユナイテッドのフロント奮闘 スポンサー求め県内外へ

今年こそJFLへ。高層ビルが立ち並ぶ大阪市に立ち、燃える瞳で前を見つめる高知Uの武政重和社長
今年こそJFLへ。高層ビルが立ち並ぶ大阪市に立ち、燃える瞳で前を見つめる高知Uの武政重和社長
 将来のJリーグ入りを目指す高知ユナイテッドSC(高知U)。昨年、初めてアマチュア最高峰リーグのJFL入りを懸けた全国地域チャンピオンズリーグ(地域CL)に挑むなど、選手たちは着実に力を付けている。だが、JFL昇格、J参入は強いだけでは駄目なのだ。特に財政面でチームを支えるフロントの頑張りが欠かせない。公式戦で入場料を取れないため、スポンサー、支援者を求めて高知県内外へ出向く。「背水の陣」で奮闘する4人の、とある一日を追った。

 午前7時半、高知市の高知U事務所前。営業担当の石田哲朗さん(30)と選手兼イベント企画担当の山内智裕さん(30)が現れた。2人が向かうのは県東部の事業所。2018年シーズンスポンサーの依頼だ。以前、縁あって契約してくれていたが、現在は別のサッカーチームと契約中だ。「何とか、お願いしよう」と意気込んだ。

午前9時38分、降りしきる雨の中、大阪に向けて走りだす武政社長(高知市南御座)
午前9時38分、降りしきる雨の中、大阪に向けて走りだす武政社長(高知市南御座)
 9時38分、事務所。武政重和社長(43)がカバンを手にデスクを立った。この日は「試合を除けば、年に数回だけ」という県外出張。スポンサーの獲得や、継続をお願いする旅だ。目的地は大阪。アポイントメントは午後2時、3時、3時半、そして夜に1件。自ら車のハンドルを握って高速を一路、東へ―。

午前10時11分、某事業所に営業をかける石田哲朗さん=左=と選手兼任の山内智裕さん(県東部)
午前10時11分、某事業所に営業をかける石田哲朗さん=左=と選手兼任の山内智裕さん(県東部)
 10時、県東部。30分ほど前に着いた石田さんと山内さんが事業所へ。山内さんが、管理職男性に、ともによく知る選手の話を振って“キックオフ”。歓談後、石田さんがやんわりと切り出した。「どこかのタイミングでお願いできたら…」。男性は、申し訳なさそうに「昔と違って、トップの一存では決められない。ご協力できるかどうか」。“顔合わせ”程度だったものの、2人は「まず第一歩」と前向きだ。

午後0時19分、「腹が減っては戦ができぬ」とばかりに、真剣な顔でサービスエリアのコンビニおにぎりを吟味する武政社長
午後0時19分、「腹が減っては戦ができぬ」とばかりに、真剣な顔でサービスエリアのコンビニおにぎりを吟味する武政社長
 午後1時半、大阪市。武政社長は大阪のど真ん中に立つホテルのラウンジで先方を待つ。そのまま1時間が過ぎて―?

午後3時13分、スクールコーチらも姿を見せ、しばし活気づく高知U事務所。奥はフロント紅一点の馬詰まやさん
午後3時13分、スクールコーチらも姿を見せ、しばし活気づく高知U事務所。奥はフロント紅一点の馬詰まやさん
 2時半、事務所。経理やグッズのネット販売などを担当する馬詰まやさん(48)が戻った。選手への栄養補助費書類や決算資料の作成、メール対応…。手が止まらない。石田さんも1時間以上、パソコンに向かう。「帰省するので、関東の県出身者に営業できないかと…」

 2時40分、大阪。「ごめんなさい。新聞には相手が大遅刻をしたって書いといてください」。現れたのは、セレッソ大阪スポーツクラブ代表理事を務める宮本功さん(高知大出)。育成では日本一ともされるセレッソの育成システムを、高知Uの西村昭宏スーパーバイザーとともにつくり上げた超大物だ。

 J1セレッソは大谷武文監督の派遣元でもある。高知県でのサッカースクールを協力して開くなど、関係は深い。

 そして宮本さん自身がただ者ではない。武政社長から「記者が密着取材している」と聞くと、「大阪ではマスコミとそういうお付き合いができにくい。だから自前で発信してきた」。

 フェイスブックなどで丁寧に広報した結果が「100万『いいね』」。この数字は国内スポーツ界ではサッカーの男子日本代表に次ぐそうで「スポーツクラブとしては日本一」。「3700『いいね』」の高知Uと比べれば、雲の上の、上の、上の数字で、武政社長もあっけに取られた表情だ。その後、スクールのことなどを詰めて怒濤(どとう)の二十数分間が終了。気付けば時計の針は3時5分。あれ?次のアポは3時じゃなかった? 急げ!

午後3時25分、大阪市を一望できる日本トリムの応接室で来季の展望を熱く語る武政社長(大阪市北区梅田2丁目)
午後3時25分、大阪市を一望できる日本トリムの応接室で来季の展望を熱く語る武政社長(大阪市北区梅田2丁目)
 3時17分、大阪市。雨の中を傘も差さずに走ってたどり着いたのは、土佐清水市出身の森沢紳勝さんが社長を務める日本トリム。高級ブランドと同じ並びにある高層ビルの22階で待っていたのは、田原周夫・取締役経営企画部長。40歳代半ばにして東証1部上場企業の取締役を務める。

 日本トリムは高知Uに限らず、高知ファイティングドッグス(FD)のスポンサーであり、昨年末に高知市で行われた卓球大会のスポンサーにもなってくれた高知県スポーツ界の頼もしい味方。訪問の目的は今季の活動報告と、ずばりスポンサー継続のお願いだ。

 「(地域CLは)惜しかったと聞いています」と話す田原さんに、「JFLを目指すクラブの中で、今どの位置にいるかがはっきりしました」と答えた武政社長。来季への情熱を語り、そろりと「引き続きご支援の方を…」と切り出した。

 「はい。通しておきます」。さらっと言った田原さん、ただ者ではない。あっさり過ぎて、本日2度目のあっけに取られた武政社長だが、ともあれ上々の成果だ。「来季はぜひJFLに」という激励を背中に、次の目的地へ。

 4時、事務所。石田さんはパソコン前。「営業活動管理ソフトの確認です」。馬詰さんも忙しい。

 4時10分、大阪市。武政社長が狙うのは、新たなスポンサーの開拓だ。商談場所は、某高級ホテル1階の喫茶。待っていたのは、ちょっと、いかつい感じのお兄さん???

 中島良さん(43)。武政社長と佐賀中の同級生で、大阪で建築設計などを手がける会社の専務取締役。地元トークに花を咲かせた後、「スポンサー? ええよ」と10万円のご成約。がっちり握手を交わし、「また高知で飲もうや」。

 5時、事務所。石田さんは依然、パソコン前。「チームをよく知らない方への説明資料づくり」。馬詰さんも忙しそう…。

 5時20分、大阪市。最後は、武政社長がFD社長を務めていた時の盟友、北古味鈴太郎・FDオーナーと会食。サッカーと野球、立場は違っても、「高知のために、何か協力してやれることはないか」という思いは今も同じだ。

 8時すぎ、事務所。1時間前に帰宅した馬詰さんに続き、石田さんもようやく事務所を後にした。 

 ◇ 

 成功を収めた武政社長の大阪出張。が、いつもこうとは限らない。飛び込み営業も多い石田さんは、うまくいかない方が多い。

 それでもへこたれない。現在、ざっくり1億円というトップチームの年間運営費は、JFLなら1億5千万円、数年で一気にJリーグまで駆け上がろうと思えば、2億円は要るとされる。「高知にJを」という設立理念は、かくも厳しい道の先にある。だからこその「背水の陣」。武政社長は「JFLに昇格しても、それを維持する力がクラブにないといけない」と力を込める。

 収入以外にも、グラウンド確保や認知度向上など、足りないところはたくさんある。それでも、日夜奮闘するスタッフと、それを支えるスポンサーやサポーターは常に前を向いている。

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