2018.01.27 08:00

【佐川国税庁長官】国民の前で語るべきだ

 開いた口がふさがらない。森友学園への国有地売却を巡る問題の安倍首相の認識である。
 衆院の代表質問で、国税庁の佐川宣寿長官の更迭を拒否した。理由は「適材適所の考えに基づき行った」人事だからという。先月の特別国会に続く発言だ。
 佐川氏は昨年の通常国会で、財務省理財局長として森友問題の答弁に立った人物だ。さまざまな疑念が浮上する中、「適正な価格で売った」「(交渉記録は)破棄した」と繰り返してきた。国税庁長官に昇格したのは国会閉幕後の7月のことだ。
 森友問題はその後、交渉時の音声や関連文書の存在が次々に明らかになった。会計検査院の調査でも、売却価格がずさんな積算によるものだったことが判明している。
 虚偽答弁だった疑いが生じるのは当然だ。少なくとも担当局長としての責任を果たしていない。
 国税庁長官は、全国にある税務署や国税局を束ねる税務行政のトップだ。財務省の中では事務次官級のポストでもある。
 納税は国民の義務であり、徴税の権限は強い。国税局は強制調査も行う。業務も職員も公明正大でなければならない。国税庁長官はなおのことである。
 佐川氏は長官就任後、だんまりを決め込んでいる。国会答弁について釈明するどころか、就任の抱負すら語っていない。ほとぼりが冷めるまで逃げ回るつもりだろうか。徴税トップにふさわしくない。
 当人だけの問題ではない。首相は「適材適所」と評価する。麻生財務相も責任を問うどころか、「引き続き職責を果たしてもらいたい」と述べている。政権として、あまりに無責任だ。
 疑念は膨らむ一方である。研究者の情報公開請求に対し、財務省近畿財務局は森友学園との交渉の経過を記した文書を開示した。
 国会答弁では交渉記録は「廃棄した」ことになっている。近畿財務局は「開示文書は内部の検討資料で交渉記録ではない」と釈明する。検討資料は残して、肝心の交渉記録は破棄したというのだろうか。
 開示文書には、売却交渉に入る前から「(学園と)売買金額の事前調整に努める」との方針があったことも記されていた。特別な取引だった可能性がにじむ。
 他にも残されている文書や隠されている事実がありはしないか。佐川氏は国民の前で真実を説明するべきだ。間もなく確定申告が始まるが、このままでは税務への信頼は損なわれよう。
 国会での答弁に疑義が生じている以上、国会は責任を持って真相を究明しなければならない。予算委員会などが始まる。佐川氏はもちろん、安倍昭恵首相夫人の国会招致が不可欠だ。
 首相は国会審議は「国会で決めることだ」と繰り返し主張している。与党は招致を拒否すべきではない。加計学園の問題も同様である。
カテゴリー: 社説


ページトップへ