2018.01.26 14:30

「四万十~いのちの仕舞い~」

「痛いところはどこもない」「上等」。互いを気遣う言葉を交わす患者さんと小笠原望さん
「痛いところはどこもない」「上等」。互いを気遣う言葉を交わす患者さんと小笠原望さん
同じ命として 優しいまなざし 患者と向き合う
 「きょうは死ぬる日じゃないかと。近いでしょ?」

 「そんなに簡単にはいかんでしょ」

 102歳の問いにふんわり答える。自分の命に不安を抱える者とそれを診る者の対話なのに、どこかひょうひょうとしてユーモラス。まるで近くをゆったりと流れる四万十川のように。

 医師、小笠原望さん(66)が中村市(現四万十市)に来てから20年。義父の病院を継ぐ傍ら、地域の訪問診療を続けてきた。本作の製作陣は小笠原さんに一昨年の12月から昨年9月まで密着した。

 相づちを打ち、患者さんの話をひたすら聞く。「どうですか?」「痛みはないですか?」。日を追って患者さんの反応が鈍ってきても根気よく話し掛け、表情の動きや少しのしぐさから懸命に心の声を読み取ろうとする小笠原さん。スクリーンの中で自分が患者になり、柔らかく包まれているような気持ちになった。一心不乱に耳を傾けてくれる存在がどんなにありがたいことか。同じ命として患者を見るまなざしが優しい。四万十川流域で暮らすうちに「人の命も自然の中のもの」と気付き、「これからの命」のシラスが漁の灯に吸い寄せられないでほしいと思わず願ってしまう小笠原さんらしい。

 少しでも良い兆候が見られると、「上等」「心音がきれい」と励ます。終わりを全うした患者さんには「よく頑張った」「命を使い切った」。患者を支え「いい仕舞(しま)い」を迎えた家族にもねぎらいの言葉をかける。逆に患者は医師に「痛いところはどこもない」「忙しいのにすまない」。家族は「よく診ていただいた」。医者、患者、家族がいたわり励まし合う姿が四万十の美しい自然と重なる。心を許せる医師に周囲の人々、そして豊かな自然。いつか終わる旅に、こんな伴走者がいてくれたらうれしい。

 TOHOシネマズ高知で27日から上映。同日と28日、午前11時45分の回上映終了後に小笠原さんと溝渕雅幸監督のトークショーがある。

 (鍋島和彦)

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カテゴリー: シネスポット文化


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