2018.01.26 08:00

【春闘スタート】労使の見識が問われる

 連合と経団連の両会長が会談し、2018年春闘が本格的にスタートした。
 会談で両会長は、賃上げと働き方改革が重要だという点で一致したという。トップの基本認識が同じであるのは悪くない。仕事のやりがいに直結する労使交渉を期待したい。将来の企業業績にも結び付こう。
 安倍首相が賃上げを呼び掛ける「官製春闘」が5年連続となった。22日に行った施政方針演説では、経済界に求めている3%以上の賃上げ実現について、こだわる考えをあらわにした。
 賃上げして投資にも積極的な企業は法人税の負担で優遇する。一方で収益を上げているにもかかわらず、賃上げや投資に意欲的でない企業は研究開発減税などでの優遇を取りやめると表明した。「アメとムチ」というしかない。
 これまでにも指摘してきたが、民間企業の賃金は自由な経済活動の下で、労使の交渉によって決まるのが原則である。
 統制色を強める首相の発言は、自らの経済政策に行き詰まり感が漂うことの反映といっていい。
 企業が安心して投資に資金を回せる環境をつくる。それが政府の役割のはずだ。アベノミクスによる円安の恩恵を受けている企業は少なくない。だが収益は内部留保に積み増されるばかりである。
 企業はそれぞれ事情が異なる。景気回復が続いているといわれても、中小や地方の零細企業は実感が乏しいのが実情かもしれない。これほど「官製春闘」を続けなければならない背景について、分析する必要がありはしないか。
 もっとも、経団連の榊原定征会長は首相に呼応する形で3%賃上げの実現を経済界に呼び掛けた。
 労働環境を巡って政府は、通常国会で働き方改革関連法案の成立を重要課題に位置付けている。首相は、「同一労働同一賃金」と「非正規という言葉の一掃」を実現させる、と強い意欲を示した。
 職場の環境と働く条件を整え、労働者に報いることは企業の責任であり、経営側に改善を求めるのが労働組合の役割のはずだ。政権が賃上げを求め、労働環境を変えようとすることには、企業の労使にも原因の一端があるとはいえないか。
 長時間労働の是正は喫緊の課題なのに、使用者側が明確に歯止めをかけようとする動きはあっただろうか。過労の末に自殺に追い込まれる事例は後を絶たない。非正規雇用が増え続けている現実について、労使ともどう受け止めているだろう。
 政府が春闘に介入することに是非はあるとしても、正常ではない。春闘は労使で論議すべきだ。賃金など勤務条件、労働環境の他にも目配りが必要な点はあろう。「企業は人なり」という。発展に欠かせない人材を確保するため、考えなければならない点は多いのではないか。
 これまで以上に労使の見識が問われる春闘になるはずだ。
カテゴリー: 社説

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