2018.01.23 08:00

【施政方針演説】「新たな国」が見えない

 通常国会が召集され、安倍首相が施政方針演説を行った。
 首相は冒頭、今年が明治維新から150年に当たることに言及。演説全般に明治時代に活躍した人物のエピソードをふんだんに盛り込んだ。
 技術優位の欧米諸国が迫る「国難」とも呼べる危機の中、急速な近代化を遂げた明治と、首相自らが「国難」と位置付ける現代の少子高齢化を重ね、「今こそ新たな国創りの時」だと克服に決意を示した。
 1年前にも首相は施政方針演説で「新しい国」創りへの挑戦を繰り返した。しかし、「富国強兵」を目指した明治と、国として成熟した現代の「国難」は異なるはずだ。少子高齢化の克服には、多様な角度から政策を着実に進める必要がある。
 今回の演説も前回と同様に総花的で、肝心の「新たな国」とは何かを国民に示したとは言い難い。
 主張は「働き方改革」や「人づくり革命」など昨年10月の衆院選公約で掲げた政策の焼き直しが主体で、特に目新しいものではない。
 働き方改革は首相が、今国会で最も重視する政策とされる。罰則付きの時間外労働の上限規制を設ける法案には労働界も賛同している。
 しかし一方では、一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の創設が同じ法案に盛り込まれている。労働界は法案から外すよう求めており、国会で十分な議論が必要だ。
 人づくり革命とは、要約すれば高齢者中心だった社会保障を子ども、学生、子育て世代など、全世代型に変えることだ。ただそれらに対応するためには巨額の財源が要る。膨らみ続ける借金に歯止めをかけるためには、財政健全化の道筋を明らかにしなければならない。
 首相は見直し中の「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)黒字化の達成時期と、その裏付けとなる具体的な計画について、「この夏までに示す」と表明した。
 2019年10月の消費税増税時の増収分を財源に、幼児教育・保育などの無償化を進める代わりに、財政健全化目標を断念したのは、ほかならぬ首相だ。達成可能な目標と計画を示す責任がある。
 政府の18年度予算案では、北朝鮮の核・ミサイル開発などに対応するとして、巨額の防衛装備品を購入するため防衛費が増額された。予算膨張体質は改まっていない。
 先の衆院選で自民党が重点公約に格上げした憲法改正で首相は、各党に具体案の提示を要請し、衆参両院の憲法審査会での議論を呼び掛けた。国会外では、改憲のスケジュールや内容まで踏み込んだことのある首相にしては慎重に見える。
 これが行政府の長としての立法府への配慮だとすれば妥当かもしれないが、議論の前進を期待しようにも、世論の改憲への理解は依然、深まっていない。
 「改革」「革命」の言葉が躍るだけでは「新たな国」は見えない。丁寧な説明と熟議が要る。
カテゴリー: 社説

ページトップへ