2018.01.21 08:35

【地震新聞】防災活動 高知県内の高校に広がり

 学校現場で年々広がり、深まっている防災学習。特に高知県内の高校では、2016年の「世界津波の日 高校生サミットin黒潮」や昨年の「県高校生津波サミット」を機に機運が盛り上がっている。中には学校の取り組みが地域を“先導”するケースも。各校で進む防災活動のうち、4高校の取り組みを紹介する。


防災食作りに取り組む生徒たち(本山町本山の嶺北高)
防災食作りに取り組む生徒たち(本山町本山の嶺北高)
嶺北 地元野菜で防災食
 津波被害が想定される沿岸部を支援したい―。県版津波サミットなどの取り組みを通し嶺北高(長岡郡本山町)の生徒たちはそう考えるようになった。現在は地元の野菜を使った防災食の開発に取り組んでいる。

 活動の中心は校内の自主防災組織「嶺北ガーディアンエンジェルス」。2013年から地元の小中学校などで防災紙芝居を披露するなどしている。現在は22人が所属する。

 こうした活動を通じ生徒たちは、地域の防災意識の低さを感じていた。そんな折、開かれた昨年6月の県版津波サミットの事前学習会。沿岸部の高校生らの活発な取り組みを知り、「自分たちも」の思いが強くなった。

 2年生の和田咲良(さくら)さんは昨年11月に沖縄県で開かれた「高校生島サミット」でも刺激を受けた。「土砂崩れやダムの崩壊に対する防災の啓発など、山間部の高校生でもできることはあると思う」

 防災食作りもその一つで、地域住民と一緒に地元のカボチャやイモを使ったメニュー作りに試行錯誤している。商品化も視野に入れており、2年生の西田識人(のりひと)さん(17)は「おいしくて、心がぬくもる防災食を作りたい」と意気込んでいる。


学校周辺のジオラマ製作を計画している生徒たち(高知市桟橋通2丁目の高知工業高)
学校周辺のジオラマ製作を計画している生徒たち(高知市桟橋通2丁目の高知工業高)
高知工 浸水域ジオラマで
 高知工業高(高知市)は津波被害に備えるため、建築やデザインを学んでいる生徒の専門性を生かして学校周辺のジオラマ作りを計画している。

 同校では2005年ごろから土木科の2、3年生が、課題研究の時間に南海トラフ地震について研究している。防災意識の高まりとともに、各地の小中学校に出向き防災授業を行うようになった。

 ジオラマ作りの狙いは、地域の津波対策を実効性が高いものにすること。どこから、どういうタイミングで波が入ってくるかをシミュレーションする。

 昨年4月に土木科や建築科、総合デザイン科の生徒9人で共同研究班を組織。同校から半径400メートル以内の縮尺千分の1ジオラマを19年度までの3年計画で作ることにした。

 まずは学校周辺をくまなく歩き、建造物の構造や海抜などを調べた。こうした活動を通し、地域には古い家や細い路地が多いことを知った。「地震のことを考えると本当に怖くなった」。生徒たち自身が改めて危機感を強くしたという。

 土木科3年の保川明香里さんは「家族や友達のため、そして高知のためのジオラマ。後輩には高知城周辺や高知駅周辺の製作にも挑戦してほしい」と話している。


看板を作る生徒たち。特殊なインクを使い夜でも見える(須崎市下分甲の須崎高)
看板を作る生徒たち。特殊なインクを使い夜でも見える(須崎市下分甲の須崎高)
須崎 避難経路の看板を
 須崎高(須崎市)には生徒会や有志でつくるボランティア団体「防災プロジェクトチーム」がある。地域と連携し、そして地域に頼りにされる防災活動を展開しており、現在は市内3地区で避難経路を示す看板作りを行っている。

 チームが活動を始めたのは2012年夏。学校近くの高齢者宅で家具を固定したり、各家庭から避難場所までの経路を示す避難カルテを作ったりしてきた。現在は約40人が在籍する。

 昨夏、こんなことがあった。学校近くの地区で避難カルテ作りのために実地調査をしていると、通りかかった住民から「この地区にも避難看板があったらいいんだけどな」と声を掛けられた。

 この住民は、同校が別の地区に設置した看板を見て知っていたようだった。この声をメンバーで共有すると、すぐ「じゃあ私たちが作ろう」となった。

 チーム立ち上げ当初から関わる保川治美教諭(49)は「普段から地域との関わりがあるからこういう話が生まれるんです」と、地域とのつながりを強調する。

 1年生の節安(せつやす)澪さんは「地域の人と関わる機会が多く、本当に地震が来た時も、顔見知りやき一緒に避難できると思う」と話していた。


街頭アンケートなどを通し防災を考えた生徒たち(高知市桟橋通6丁目の高知南高)
街頭アンケートなどを通し防災を考えた生徒たち(高知市桟橋通6丁目の高知南高)
高知南 観光客にも心配り
 街頭アンケートを基に避難マップや防災グッズを作ったのは高知南高(高知市)の生徒たち。同校では2年生が総合学習で「高知県の課題解決」をテーマに活動しており、毎年いくつかのチームが防災に取り組んでいる。

 2017年度は、播磨屋橋や桂浜など観光地5カ所周辺の避難場所マップを作ったチームがあった。夏休みに市中心部で500人を対象に防災アンケートを実施した際、県外の観光客が多いことが気になっていた。

 学習に取り組んだチームの一員、遠山諒さんは「観光客は土地勘がなく、災害対策もしてないようだった。役に立つマップができるのではと思った」。

 身近な材料を使って避難生活で役立つグッズ作りをしたチームも。「避難生活では何が必要か」を400人に聞き、「世代別で必要なものが違うということに気付いた」という生徒たち。

 キッチンペーパーと輪ゴムで作るマスク、ビニール袋と布のおむつ…。インターネットで調べた作り方を基に試作、改良を重ねた。

 今後は作り方を冊子にまとめ、避難所となる施設に置いてもらう予定だ。実松美咲さんは「自分たちのアイデアが災害時に役立つのかもという発見がありました」。


備防録 何かできる
 「看板を見て一人でも多くの人が助かったらいいなーって」。看板の製作途中、須崎高2年生の笹岡陽さんがぽつりと言った。

 高校の近くに住む笹岡さん。幼いころから須崎高の生徒が設置した避難看板を見てきたという。「津波避難場所」の文字と、大きな赤い矢印が描かれた看板。南海トラフ地震がいつか来ることを、静かに物語っている。

 高校生がこんなに熱心に防災に取り組むのはなぜだろう。取材に行く前、そう思っていた。

 身の回りに、大地震に向けて活動している先生や先輩がいる。その姿や結果が彼ら彼女らを動かしていると感じた。高知南高の生徒は言った。「行政が動くのも大事やけど、僕ら高校生も何かできるんやないか」

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カテゴリー: 社会いのぐ災害・防災


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