2018.01.20 08:00

【トランプ氏1年】米国は裸の王様になるな

 この1年で米国ほど失望を招いた国はないだろう。
 唯一の超大国は急変した。「米国第一」を掲げて国際協調の流れをぶち壊し、不寛容で、排外的になった。大統領の言動は品格まで問われる始末だ。
 大国でも、自国の都合や利益をごり押しするようでは信頼や威厳を失う。それを大統領自身が気付いていればいいのだが。
 トランプ大統領が就任から1年を迎えた。
 騒動の連続だったといってよい。米国が主導してきた環太平洋連携協定(TPP)や、地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。
 イランと欧米など6カ国が結んだイラン核合意も見直しを強く迫っている。民主党大統領から共和党大統領へ代わったとはいえ、あまりに乱暴なちゃぶ台返しだ。
 移民規制も強めている。メキシコ国境への壁の建設にこだわり、一部イスラム圏からの入国を禁じる大統領令を出した。
 世界に衝撃が走ったのは、エルサレムをイスラエルの首都と正式認定したことだ。アラブ諸国も西側諸国も憤り、国連総会で批判決議が採択された。当然である。中東を再び火薬庫にするつもりだろうか。
 最近では、移民問題でアフリカやカリブ海諸国を汚い言葉で侮辱し、謝罪を求められている。公の場で使う言葉ではなく、差別主義者と取られても仕方がない。
 米国の世論調査では、トランプ氏の支持率は30%台と低迷している。一方で、製造業などに携わる白人労働者や共和党支持者らの期待は依然高い。
 雇用や移民政策などを巡り、国民のエスタブリッシュメント(既存の支配層)への強い不満が、トランプ大統領を生んだ。米国社会の分断と対立は解消していない。
 ことしは秋に中間選挙を控える。野党民主党に勢いがあるという。大統領選挙を巡るロシア疑惑の捜査も進んでいる。捜査や中間選挙の行方によってはトランプ氏の弾劾訴追も現実になりそうだ。
 巻き返しへ、トランプ氏は保護主義的、排外主義的な政治をさらに推し進める可能性が高い。大型減税の法案を成立させ、経済や雇用情勢が好調なことも、強気の政策を後押しするだろう。
 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への圧力も強める可能性がある。軍事行動を否定しておらず、日本への影響は計り知れない。日本政府は自制を促していくべきだ。
 気になるのは、混乱する米国や国際社会を横目に、中国やロシアが国際的な存在感を高めていることだ。特に中国は自国主導の多国間経済圏構想を着々と進めている。
 世界のリーダーとして米国の使命は大きい。度量を広く、批判にも耳を傾けるべきだ。罵倒したり、「フェイク(偽)」だと片付けてしまっては裸の王様になる。
カテゴリー: 社説


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