2018.01.19 14:30

HOMESICK

子どもたちの遊びに巻き込まれ、主人公は変わっていく((C)PFFパートナーズ/東宝)
子どもたちの遊びに巻き込まれ、主人公は変わっていく((C)PFFパートナーズ/東宝)
失業した「さとり世代」
よどんだ日常を 子どもたちが変える
 長い不況時代に順応して、車やブランド品を欲しがらず、身の丈にあった生活で満足―。そうした傾向のある今どきの若者を「さとり世代」と呼ぶという。

 この映画の主人公、沢北(郭智博)もその世代がモデル。特にやりたいことはなく、独り暮らしの家と職場を往復する日々を送っている。ところが会社の社長が夜逃げし、突然失業。同時に再開発計画によって家を立ち退く期限が迫り、居場所もやることもなくなってしまう。

 「○○世代」と簡単にくくるのもどうかと思うが、確かに沢北のかったるそうな雰囲気や人間関係には現代の空気感が漂う。何を考えているのか、何も考えていないのか。上の世代にはちょっとイライラしそうだが…。

 目の前の問題をほったらかして、惰性のように続く日常は、近所のわんぱくな小学生3人組のいたずらで一変する。玄関のベルを押して逃げ去る「ピンポンダッシュ」から始まって、水風船や水鉄砲を使った戦いごっこへ。まだ空気を読むことを知らない子どもたちは沢北の懐に強引に入り込み、遊びに巻き込んでいく。

 ころ助、ヤタロー、オッチと呼び合う子どもたちの表情は屈託がなく、いつもダッシュで画面を駆ける。誰もが遊びに全力だった子ども時代が重なり、いとおしい。彼らも沢北のように、時代を反映した処世術を身に付けて大きくなるのだろうか。大人の姿とのびのびした子どもとのギャップに、脚本・監督を務めた広原暁(31)の現代へのまなざしを感じた。

 遅れてやってきた長い夏休み。主人公は子どもたちと関わる中で、自分なりに現実と向き合っていく。人生は簡単に悟れるものではないけれど、一歩ずつ進んだ先に“ホーム”はあるはず。見終わった後、身の丈ほどの希望に心が温まった。

 広原監督の劇場デビュー作品(2013年)。武蔵野美術大学の卒業制作「世界グッドモーニング!!」(09年)でポン・ジュノやジャ・ジャンクーらに高く評価され、世界各国の映画祭で上映された経歴を持つ。ウィークエンドキネマMで上映中。

 (松田さやか)

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カテゴリー: シネスポット文化


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