2018.01.15 08:00

【自衛隊装備増強】専守防衛踏み外す危うさ

 相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その防衛力も必要最小限にとどめる―。1954年に自衛隊が発足以来、日本が掲げ続けてきた「専守防衛」の基本姿勢である。
 戦後日本の平和主義や、国際協調の道を開いてきた憲法9条の精神にのっとり、決してゆがめてはならない原則だ。だが、2004年の自衛隊のイラク「戦地」派遣をはじめ、その足場は揺らいできた。
 防衛省が「空母艦載機」としての配備を視野に、新たな戦闘機導入を検討している。海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦の艦首部分をスキージャンプ台のような形状に改修し、「軽空母」として運用する案などが想定される。
 沖縄・尖閣諸島など東シナ海から太平洋へ、急速に海洋進出を図る中国の軍事的台頭をにらんだ構想とされる。中国の軍備増強に防衛省内には「南西諸島周辺の制空、制海権の確保が困難になる」との危機感が募っているという。
 空母の保有は、軍事的な行動領域と攻撃能力が飛躍的に拡大することを意味する。それ故、日本は自衛のための必要最小限度を超えるとして、攻撃型空母の保有は「許されない」としてきた。
 たとえ、日本が「離島防衛」のための「防御用」だと主張しても、他国からすれば空母展開に変わりはない。周辺国の軍拡競争さえも助長しかねない。
 政府は航空自衛隊戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイルの導入方針も決めた。射程は約500~900キロに達し、これも中国の海洋進出などを踏まえた「離島防衛の強化」を目的に挙げる。2018年度予算案に関連経費を盛り込んだ。
 空母や巡航ミサイルは、日本を狙った相手のミサイル発射拠点を事前に破壊する「敵基地攻撃」を可能にする。政府は「法理上、自衛の範囲に含まれる」との見解だが、専守防衛の理念から逸脱する懸念は拭いようがない。
 日本周辺の安全保障環境が厳しくなってきているのは事実であり、その備えは欠かせない。だが、政府が自衛隊の装備増強を急ぐ姿は、専守防衛の自制を一気に崩しかねない危惧を抱かせる。9条の誓いを踏みにじる。
 安倍首相は年頭会見で「従来の延長線上ではなく、真に必要な防衛力を」と意欲を見せた。対日貿易赤字を問題視するトランプ米大統領から、防衛装備品購入を迫られている事情も背景に指摘される。
 政府は今年、防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」を前倒しで見直す構えだ。空母配備などの検討が本格化しかねない。北朝鮮情勢などを強調し、専守防衛の一線を越えるような過剰な防衛力は断じて許されない。
 防衛費の予算案審議をはじめ、今月召集予定の通常国会のチェック機能がまずは問われる。丁寧な説明と、透明で冷静な議論を求める。
カテゴリー: 社説


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