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2007.01.01 07:27

500人の村がゆく(33) 新入り、嫁も来ましたぁ

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あいさつ回りで山道を妻と登る久住さん(大川村大平)

 中学時代はソフトボール部のエースだった。「エースで四番?」と聞いたら「いやエースで九番…ふぁははは」。会話はおおむね笑って締める。

 久住一友さん(26)は大阪市西淀川区の出身。河口の堆積(たいせき)地に築かれた臨海工業地帯のそばで育った。

 無口だった幼いころはいつも公園に集まる虫を眺めた。

 「友達おらんかって。ひと言しゃべると『クスミがしゃべったー』言われるくらい無口で。木や虫ばっか見とって」

 小学三年のとき、「虫が部屋に入ってくる」と住人が不満を言い、マンション中庭にある公園の大木が切られた。

 「僕一人反対して。マンション会社の人に手紙書いて抗議して。『何で切るんですか』って管理人さんにも言うたけど、相手にしてもらえなくて。そのころからかなあ…」

 「教室に入った一匹のガに、みんなきゃーきゃー騒ぐ。それ、おかしいやろって」

 府立高の普通科に進むと「園芸生物部」を創設。校庭の木を刈り込み、畑を作った。家では祖母の盆栽をいじった。

 父親は自宅マンションでギター教室を経営していた。息子が四歳になると毎晩、バッハやスペイン民謡などを教えた。

 「毎晩三時間、みっちり。僕が泣くと『泣くんやったらやめー!』って怒鳴るし、やめると『なんでやめるんやー!』。どっちやねん、いう話で。練習は高校に入っても続いて」

 林業の道に進みたいと父親に告げると、激怒された。

 「父は教室を継がせたかったから、縁切るぞ! まで言われて。ほんで父を説得して。音楽家は目指す人が多いからええけど、山はそうじゃないから言うて…」

 全寮制の兵庫県立「山の学校」で学んだ後、同県養父市の森林組合に三年間勤めた。高松市のNPO「どんぐりネットワーク」で働き、奉仕活動の山草刈りに来て大川村を知った。

 「どうしても山で働きたい」と大川村森林組合の採用試験を受けて合格。四月に転入した。連日山に入り、日に焼かれ、草を刈り、木を倒し、運ぶ。

 住まいは、か細い道の先の先の大平地区。八月中旬、草刈りの奉仕で知り合って結婚したばかりの妻、由佳さん=香川県善通寺市育ち=を「日当たりがようて、星がきれいな所や」と大川村に呼んだ。猛暑の日盛り、二人で、ご近所さんにあいさつして回った。

 「新しく来たクスミですぅ。嫁も来ましたぁ」

 熱風に押されるように坂道を上がる。「これって車の道?…確かに日当たりはええけど…なんか不安」と話す妻の脇、ふぁはははと豪快にごまかした。

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