2017.12.24 07:30

職員過労自殺と梼原町提訴 高知地裁 遺族8900万円請求

自殺した男性の仏前で「なぜ、梼原町は謝罪すらしないのか」と憤る両親(高知市内)
自殺した男性の仏前で「なぜ、梼原町は謝罪すらしないのか」と憤る両親(高知市内)
 2014年12月に高知県高岡郡梼原町の職員だった男性=当時(34)=が焼身自殺したのは、町の過重な業務が原因だったとして、遺族が23日までに町を相手に約8900万円の損害賠償を求める訴訟を高知地裁に起こした。今年7月には、地方公務員災害補償基金県支部が男性の自殺と公務との間に「相当因果関係がある」として公務災害と認定した。町側は認定後も訴えの棄却を求めている。

 訴状などによると、男性は民間企業などを経て14年4月に同町に採用され、町教育委員会の生涯学習課に配属された。当初から複数の業務を担当し、1カ月の時間外労働は「過労死ライン」と呼ばれる80時間を超える月も。10月には担当していた「龍馬脱藩マラソン大会」が台風で中止になり、参加料の返金や精算などに追われ、残業時間も長くなっていった。

 11月になると周囲に「僕はもうすぐ死にます」などとこぼすように。12月にマラソン大会の事後処理を巡って懇親会の席で上司から叱責(しっせき)を受け、その3日後に町内の駐車場で灯油をかぶって焼身自殺した。

 地方公務員災害補償基金県支部は、男性が10月下旬にうつ病を発症し、同月の時間外労働は106時間を超えていたとして、公務災害と認定した。

 遺族が町を相手に損害賠償訴訟を起こしたのは、公務災害認定前の16年4月。当初から町側は訴えの棄却を求め、認定後も「(10月の)時間外勤務時間数の判断は疑問がある」「(上司の)指導は『叱責』に該当するものではない」などと主張している。


両親「悔しい」「謝罪を」 過重労働 町責任認めず
 12月15日の昼すぎ。高岡郡梼原町の中心部にある駐車場の片隅に、花束が手向けられていた。3年前のこの日、同町職員だった男性はここで自ら灯油をかぶって火を放ち、34歳の命を絶った。

 「優しくて、自分の思いをあまり人に言わない子でした。結婚を前提にお付き合いしていた人もいたのに、なぜこんなことに…」。男性の母親(61)が苦しい胸中を語る。
 
 男性は東京の企業で約6年間働き、2009年に実家のある高知市に帰郷。14年4月に梼原町職員として就職が決まった時は、安定した職に就けたことを喜んでいたという。

 だが、待っていたのは1人では抱えきれないほどの業務量と「過労死ライン」を超える残業だった。過重労働の結果、男性は就職から半年余りでうつ病を患ったと認定された。

 同年12月12日。上司から叱責(しっせき)を受けたとされる懇親会は高知市内で開かれた。

 この日実家に泊まった男性は、翌13日、梼原町に帰る際に「部外者の前で叱られた」と疲れた表情で母親にこぼした。普段から弱音を口にすることの少なかった息子の言葉を不審に思ったが、「まさか自殺するほど追い詰められていたとは。気付いていれば帰しませんでした」。

 2日後の15日朝、町から電話があった。男性とみられる焼死体が発見された、という連絡だった。両親は須崎署で変わり果てた姿の息子と対面した。

 「一体、息子はどんな思いだったのか。それを知りたい一念でした」。両親はそう考え公務災害認定の請求と訴訟に踏み切った。

 地方公務員災害補償基金県支部の調査で、公務と自殺との因果関係が認められた。しかし、町はその後も責任を認める姿勢を見せていない。

 男性の父親(68)は「町は(認定された)時間外労働の時間をごまかそうと必死になっている。悔しい」。母親は「亡くなった息子は何も反論できない。町からちゃんとした謝罪をもらいたい」と涙を拭った。

 先進的な移住・定住策や社会資本整備などで県内屈指の元気な町として知られる梼原町。それを支えるのは職員の過重労働なのか。取材に対し、吉田尚人町長は「裁判については係争中のためコメントできない。職員が安心して働ける環境づくりに精いっぱい取り組んでいく」と話している。

カテゴリー: 社会高幡


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