2017.12.14 08:00

【伊方原発】運転差し止め決定は重い

 原発の安全性について、あまり注目されてこなかった角度から司法が疑問を呈した。
 広島の住民らが四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で広島高裁は、来年9月末まで運転停止を命じる決定をした。
 最大の理由は、阿蘇の巨大噴火の危険性だ。火砕流が到達する可能性が十分小さいとは言えないとして、立地を不適とした。 
 3号機は昨年8月に再稼働し、ことし10月から定期検査のため停止している。来年1月に運転を再開する四電の計画は事実上不可能になったといってよい。
 原発の再稼働を巡っては、伊方を含め、各地で運転差し止めの仮処分申請が相次いでいる。地裁段階では判断が分かれているが、高裁が運転停止を命じたのは初めてだ。
 火山は全国各地に存在する。大きな課題を突き付ける、重い決定といえよう。政府や電力企業、安全審査を担う原子力規制委員会も深く受け止める必要がある。
 決定で広島高裁は、約9万年前に阿蘇で発生した「カルデラ噴火」に触れ、四電の火砕流シミュレーションの甘さを指摘した。研究では、この時の噴火は火砕流が100キロ先まで到達し、山口県に達したことも分かっている。
 阿蘇の火砕流が海を越えて伊方に到達する危険性は、簡単に想像できるものではない。違和感を持つ人もいるだろう。
 思い返したいのは東京電力福島第1原発事故だ。大津波の襲来を過小評価し、悲劇を招いた。自然の脅威を謙虚に受け止めることが大きな教訓である。火山の影響も軽んじることはできない。
 だが、原発回帰は進んでいる。規制委トップが新規制基準に適合しても「絶対安全とは言わない」と主張している中で、だ。決定はこうした現状に改めて疑問を投げ掛けるものでもあろう。
 広島高裁は他方で、地震や津波など火山被害以外の新規制基準、四電の想定は「合理的」とした。
 伊方原発は北側に巨大活断層の中央構造線が走る。原告は、四電が耐震設計の目安となる基準地震動を過小評価しており、新規制基準の実効性の不十分さも主張してきた。
 決定は、地震と火山とでは明らかに判断が異なっている。大きな疑問を残したといえよう。
 伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を巡っては、今後も司法判断が続く見込みだ。松山地裁の却下決定を受けた高松高裁の即時抗告審のほか、大分地裁、山口地裁岩国支部でも審理が続いている。
 四電は広島高裁に対し、早急に異議申し立ての手続きを取る方針だ。裁判長は近く定年退官するため、新裁判長による審理が注目される。
 福島第1原発事故のような惨劇を繰り返してはならない。安全を求める住民の当然の権利に対し、司法の責任は重い。
カテゴリー: 社説

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