2017.12.12 08:00

【がん治療と仕事】安心できる制度を早く

 働く人が、がんにかかれば治療のため通院が必要だ。勤務は負担ともなる。だが「短時間勤務」「在宅勤務」制度がいずれも、主要企業の約7割で設けられていないことが共同通信のアンケートで分かった。
 回答したのは、自動車や電気製品のメーカーなど、日本を代表する企業ばかりだ。治療と仕事の両立を求める従業員に対し、企業の理解は不足しているといっていい。
 大手企業で先に挙げた水準なら、中小規模で柔軟な勤務制度を取り入れている企業の割合は、さらに低いとみて差し支えないだろう。
 国立がん研究センターの推計によると、2013年にがんと診断された約86万人のうち、20~64歳が約3割を占める。働く世代とがん治療の問題は、企業にとって避けられなくなりつつある。働きやすい環境を整えることは、企業の社会的責任といえはしないか。
 がんへの社会の関心は少しずつ上向いているとも考えられる。がんにかかっていることを明かす著名人が増えた。闘病の経過を講演やブログなどで公開する人も多い。一般の患者や家族の間に共感が広がり、励ましの声が寄せられるケースもしばしば伝えられる。
 著名人に限った話ではない。誰しもがんにかかり、仕事と治療の兼ね合いを心配しなければならなくなる可能性がある。
 医療技術が進歩し、がん患者を取り巻く環境は変わっている。進行の度合いや部位などで個人差はあるにせよ、治療の主流は、休業を迫られる長期入院から、短期入院と通院に切り替わっているという。そんな実情にも目を向けてほしい。
 企業の理解が広がらないのは、なぜだろう。「休むと同僚に迷惑が掛かる」と遠慮し、退職を選ぶ人もいる。実態を把握できていないのが一因かもしれない。「フルで働けない人には任せられる仕事は少ない」とする企業もあるという。
 治療費や生活費のために、働き続けることを選ぶ人は少なくないはずだ。勤務の形を広げることは従業員はもとより、その家族の安心感にも必ず結び付く。
 アンケートでは、相談窓口などを備えた企業が6割弱にとどまった。有給の私傷病休暇は半数余りが設けているものの、時間単位の年次有給休暇となると3分の1にすぎない。相談窓口の整備も含め、さらにきめ細かく対応すべきである。
 従業員が持つ知識と技能は企業にとって財産である。柔軟な勤務制度で就労を促進し、活用する方策を取る必要があろう。
 労働力人口が次第に減る中で、企業には常に、従業員が働く環境を見直す努力も求められる。がんの他にも病気を抱え、通院に時間を割きながら働いている人々に、応えようとする姿勢が欠かせまい。
 患者の雇用継続への配慮を企業に求めた改正がん対策基本法の成立から1年。政府には一層の啓発と、理解を広げる手だてを求める。
カテゴリー: 社説


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