2017.12.11 08:15

【防衛費の膨張】聖域扱いしていないか

 政府は2018年度の予算編成で、防衛費を過去最高の5兆2千億円程度に増やす方向という。
 防衛省からの概算要求の時点では5兆2551億円だった。要求がかなりの部分で満たされた形とみられる。17年度当初予算の段階を2・5%上回る額だ。安倍政権では13年度から6年連続の増加となり、膨張する一途といっていい。
 確かに東アジアの安全保障環境は予断を許さない状況である。北朝鮮は核・ミサイル開発に突き進む。中国は軍備増強と海洋進出を前面に打ち出している。その中で、日本は防衛力の整備が一定必要なことに異論はない。
 しかし国と地方を合わせて1千兆円を超す債務残高を抱える現実がある。財政規律を緩めることがあってはならない。
 高齢化に伴い増え続ける社会保障費は、医療や介護の負担増、給付の削減で圧縮しようとしている。生活保護費の引き下げを検討し、所得税改革によって税収増を図ろうとするなど、多くの分野で見直しが進められている。
 防衛費だけが際限なく膨らみ、特別扱いに等しいようにも映る。国民生活向けの予算を切り詰め、防衛費を増やすのはバランスを欠くといわざるを得ない。防衛費は聖域と位置付けていないだろうか。
 衆院選を前に安倍首相は北朝鮮情勢を「国難」と表現した。違和感が拭えない言葉だ。国民の命と安全を守ると主張する一方、「今なら理解されやすい」とみているのでは、と考えたくもなる。
 首相は防衛費の国内総生産(GDP)1%枠について「閣議決定で撤廃した」と繰り返してきた。「GDP比と機械的に結び付けるのは適当ではない」とも述べ、上積みへの意欲をうかがわせる。
 数字にとらわれず、状況に応じて適切に判断するのが本来であるのは間違いない。果たして現状がそうかとなると、疑問が残る。抑えが利かなくなる可能性があるから、歯止めが必要ではないのか。
 気になるのは、日米の軍事的な一体化が進みつつある点だ。
 北朝鮮の非核化と弾道ミサイルの開発阻止へ連携を強めるのは当然だろう。だが、連携強化によって自衛隊の役割がさらに広がれば、日本の「専守防衛」の根幹が問われることになる。なし崩しでさらなる防衛費の増加につながる懸念もある。
 トランプ米大統領は「歴史的な軍事費増額」を明言している。中国も習近平国家主席が「強国」への野心を鮮明にした。北朝鮮も含め、アジア太平洋の各国が軍拡を競い合うばかりでは、地域の安定を損なうことになりかねない。
 防衛力に頼るだけでなく、日本には外交努力を重ねる姿勢が求められる。防衛費の中身も、無駄はないのか、必要な装備なのかなど厳密なチェックが欠かせない。防衛費の在り方を巡って徹底した国会論議をすべきである。
カテゴリー: 社説


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