2017.12.10 08:00

【人づくり革命】 生煮えの政策は無責任だ

 政府は「人づくり革命」の具体的な内容を決めた。教育の無償化を柱に、2兆円を投じて人材育成に力を入れるという。衆院選前に安倍首相が掲げていた。
 高齢者向けが中心だった従来の施策を見直し、子ども、学生、子育て世代など、全世代向けとする方針を打ち出したことになる。
 日本は教育費の負担を家計に頼り続けてきた。教育機関への公的支出の割合は先進国などで最低の状況が続く。裕福な家庭ほど受けられる教育の選択肢は多い。今のままでは、家庭によって子どもの学歴に格差が生じてしまう。
 若い世代に目を向ける必要があると、私たちは警鐘を鳴らしてきた。今回の施策を通じて教育機会が均等に確保されるようになれば、格差の解消にも結び付こう。方向としては間違ってないといっていい。選挙公約として注目した人も多かろう。
 取りまとめた政策パッケージでは先送りが目立つ。首相の表明が唐突だったにせよ、生煮えで発表すれば混乱を招きかねない。
 看板政策だからと首相官邸が取り仕切り、急いで形を整えたのではないか。そんな疑問も浮かぶ。
 0~2歳児の保育所は住民税非課税世帯を無償化とした。3~5歳児に関しては幼稚園、認可保育所、認定こども園を原則として無償化の対象とした。
 高等教育では大学、短大、高専、専門学校を対象に、住民税非課税世帯を無償化としている。例えば国立大学の場合は、授業料と入学金を免除すると明記した。
 これ以外は、ほぼ結論を持ち越した。私立大学は国立大学と同様の内容に加え、授業料に一定額を加算するというが具体的な金額はない。私立高校に関しては、授業料無償化としたものの、財源は2兆円とは別に確保を目指すという。
 波紋を広げた認可外保育所は範囲の設定を先送りした。政府が無償化の対象外を検討、と報道されると、保護者から認可保育所に漏れたからなのに不公平だ、と批判の声が上がった。先の特別国会で首相が火消しに追われる一幕もあった。
 そもそも全面的な無償化には、4兆円余りの追加財源を要すると文部科学省が試算している。大学授業料に約3兆1千億円、幼児教育・保育に約7千億円などだ。待機児童問題の優先を求める声も根強い。
 教育は人生を左右しかねない重要な問題である。無償化の対象をどう決めるかは、負担の公平性にも関わる。結論を急ぐあまり、無責任な内容となっては若い世代の人生に影響を及ぼしかねない。細部まで徹底して煮詰めた制度とすべきだ。
 政策パッケージは、人づくり革命を「成長を確かにするために生産性革命と車の両輪」とする。政権の経済政策の補完という位置付けだ。
 違和感を抱く。誰もが充実した人生を送るため社会の基盤を支える人材を育てる―。そこを第一に考える必要がありはしないか。
カテゴリー: 社説


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