2017.12.03 08:00

【日馬富士引退】旧弊の土壌を根こそぎに

 酒席で後輩力士に暴行しけがを負わせた問題で、横綱の日馬富士関が現役引退した。
 知人への暴力問題の責任を取る形で引退した横綱朝青龍関に続く、角界最高位力士の不祥事であり、大相撲の歴史に汚点を重ねた。
 もちろん、日馬富士関の引退で閉幕にはならない。事実関係の詳細な解明も、暴力問題を繰り返す角界の病根の究明も途上だ。真相不明のままで「引責」が容認されるのかさえ、疑問符が付く。
 暴行問題が表面化した後も日馬富士関には現役続行の願望があったと伝わる。鳥取県警による捜査が進み、日本相撲協会の横綱審議委員会が「非常に厳しい処分が必要」との見解を示したことで、追い詰められたのではないか。
 同じモンゴル出身関取らが集まった酒席で暴行は起きた。横綱の白鵬関と鶴竜関も同席する中、日馬富士関が平幕貴ノ岩関の態度に立腹、頭などを平手やカラオケのリモコンで激しく殴打し、頭部裂傷などを負わせた―とされる。
 「弟弟子の礼儀がなっていないときに直し、正し、教えることが先輩の義務」。日馬富士関は引退会見で反省の弁を述べながら、殴打の経緯を説明した。その理由に正義感があったとしても、暴力による制裁が許されるはずがない。常識だ。
 事実解明の責任を負う協会の調査のもたつきも「懲りない角界」への不信を強める。
 10年前の序ノ口力士への暴行死事件や八百長問題など、大相撲界は不祥事が相次いだ。そのたびに協会の統治能力が問われた。2014年には税制面で優遇される公益財団法人への移行認定を受け、信頼回復を誓ったはずだ。
 反省も、教訓も生かされず、古い体質が続いていたことになる。しかも、品格が求められるとされる横綱が3人も同席した場で暴力がまかり通った。自制も、抑制も作用しなかった。日馬富士関一人の問題で片付けられない。
 協会は暴行問題を把握しながら、報道されるまで公表さえもしなかった。「国技」として、国民に果たすべき説明や透明性確保への責任感の欠如が疑われよう。
 貴ノ岩関の師匠、貴乃花親方の非協力姿勢も協会を混迷させてきた。元横綱で、協会理事という責任ある立場でもありながら、「警察の捜査終了後に」と言い張り、協会側の貴ノ岩関への聴取を拒んでいる。
 理由にならないだろう。協会には事実解明の主体的責任がある。貴乃花親方のかたくなな態度の背景に、協会への反発や「権力闘争」があるとの臆測が飛ぶ。異議があれば、堂々と組織をただすのが筋だ。
 協会が再び問われているのは自浄能力である。絶対的な上下関係を尊ぶ角界で「特別な世界だから許される」といった思い上がりはなかったか。旧弊の土壌を根こそぎにする覚悟で臨まなければ、再び過ちを繰り返すだけだ。
カテゴリー: 社説

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