2017.11.28 08:00

【賃上げ企業減税】過度の経営介入は危うい

 政府が2018年度税制改正で、3%以上の賃金アップを実現した企業の法人税を軽減する半面、賃上げに後ろ向きな大企業は優遇措置の適用対象から外す、新たな税制案を検討している。
 アベノミクスによる円安の恩恵を受けた企業が巨額の利益を得ながら、内部にため込み、設備投資や賃上げに振り向けない―。デフレ脱却がかなわない理由として、安倍政権は業を煮やす。
 その閉塞(へいそく)状況への打破へ、膨らみ続ける企業の内部留保を狙い撃ちにしているのは間違いない。優遇措置を構えながらも、むしろ「ムチ」の色合いを濃くする。
 デフレ脱却を最大目標に掲げる安倍政権はこれまでも、賃上げを促す税制措置を講じてきた。国税と地方税を合わせた法人実効税率を徐々に引き下げてきたほか、一定割合以上の賃上げを実現した企業の法人税を軽減する「所得拡大促進税制」を13年度に導入した。
 今回の税制見直しの背景には、そうした優遇策の効果が十分に上がらない限界状況に対する安倍政権のいら立ちが見て取れる。
 17年度末で期限を迎える所得拡大促進税制を改める。
 現行制度は2%以上の賃上げなどを行った企業に対し、給与増加額の一定割合を法人税から差し引く。これを拡充し、18年度で29・74%の実効税率はそのままに、3%以上の賃上げに応じた企業に限り、「実質負担」を20%台半ばまで引き下げる仕組みが浮上している。
 一方で、利益を上げながらも、賃上げに踏み切らない企業には実質的な増税を迫る。試験研究費の一部控除といった租税特別措置の適用除外とするペナルティーである。
 実効税率引き下げの限界が見える中で繰り出した「実質負担」の軽減という新たな発想だが、政府の要請に応じなければ税負担を増やすという「圧力」に他ならない。
 企業の内部留保は安倍政権発足後の4年で100兆円余り増え、16年度で406兆円に達する。政府はこの内部留保を「アメとムチ」で吐き出させて賃上げにつなげ、消費を喚起し、物価上昇に向かわせるという循環図を描く。
 だが、企業はそれぞれで事情が違う。経済の先行きへの不安や、グローバル化で激化する市場競争への備えもあろう。それはアベノミクスそのものへの懸念と言い換えられる。円安株高を誘導した金融緩和政策も出口が見えない。
 安倍政権は経済界への賃上げ圧力を強め、政府主導の「官製春闘」を演出してきた。しかし、賃金は自由な経済活動の下、労使間で決まっていくのが原則だ。権力によって企業経営に過度に介入するような手法は危うい。経営を悪化させてしまえば本末転倒だ。
 政府による賃上げ促進を否定するのではない。企業が内部留保を安心して使える環境づくりこそ、政府が負う最優先の課題である。
カテゴリー: 社説


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