2017.11.27 08:00

【受動喫煙対策】緩すぎて実効性に欠ける

 受動喫煙の対策強化を目指していたはずの厚生労働省の姿勢が、尻すぼみになっている。
 健康増進法の改正作業で、喫煙を認める飲食店の店舗面積を「150平方メートル以下」とする方向で調整していることが分かった。当初案の「30平方メートル以下」に比べ大きく後退した。
 自民党内の規制強化に反対する勢力に押し切られた格好だ。150平方メートル以下だと狭い店舗が多い都市部は大半が喫煙可能になりかねない。
 厚労省は改正案を来年の通常国会に提出する考えだが、これでは基準が緩すぎて実効性に欠ける恐れがある。再考を強く求めたい。
 受動喫煙とは、他人のたばこの煙を吸わされることを指す。問題は単なる臭いや煙たさではない。好まざる「喫煙」により、肺がんや心筋梗塞などの危険が高まることだ。
 国立がん研究センターの分析によると、受動喫煙が原因とみられる国内の推計死亡者数は年間1万5千人にも上る。たばこを吸わない人が8割を超える中、深刻に受け止めたい数字だ。
 世界保健機関(WHO)も各国に屋内禁煙の措置を講じるよう促している。既に50カ国近くが、職場や飲食店を含む公共の場の屋内喫煙を法律で禁じているという。
 日本でも禁煙や分煙が進んできたが、WHOの評価は「世界最低レベル」と厳しい。健康増進法などで施設の管理者に受動喫煙の防止措置を求めているが、罰則のない努力義務だからだ。
 政府が重い腰を上げるきっかけになったのが、2020年の東京五輪・パラリンピック開催である。WHOは開催地に「たばこのない五輪」を求めている。厚労省も20年までに「受動喫煙のない社会を目指す」ことを目標に掲げた。
 最近の外国人観光客の増加を考えても、国際水準に近づけるのは政府の責務だろう。
 今年3月の改正案の骨子では、厚労省は飲食店を原則禁煙とし、30平方メートル以下のバーやスナックなどは例外扱いとした。罰則も設ける方向だった。
 全面禁煙は見送ったが、「厳しすぎる」と猛反発したのが自民党のたばこ議員連盟だ。吸う権利や分煙の推進を主張し、見直しを迫った。
 党は例外を150平方メートル以下とする対案を示したが、当時の塩崎厚労相は受け入れず、協議は決裂。内閣改造で塩崎氏が退いたことで形勢が変わったようだ。
 吸う権利は否定しない。ただ、それによって周囲の人が健康を損なうことがあってはならない。分煙では煙が漏れ出る可能性が高い。清掃や接客時に従業員が煙を吸ってしまう問題も残る。
 禁煙強化が店の経営に影響するとの懸念がある。これも、全面禁煙にした店のほとんどで影響はなかったとの調査結果が国内外にある。
 優先されるべきは国民の健康だ。実効性のある対策が講じられなければならない。
カテゴリー: 社説

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