2017.11.26 08:00

【生活保護と教育】学ぶ意欲を後押ししたい

 生活保護世帯の子どもが、高等教育を受けることは、さらなる貧困に結び付く恐れがある。現在の制度では、高校を卒業すれば働くことが前提となっていて、保護を打ち切られてしまうからだ。
 世代間の貧困の連鎖を断ち切るためとして、教育機会を確保する重要性がしばしば指摘される。だが、保護を受けられなくなると、アルバイトや奨学金で学費と生活費を工面せざるを得ない。返済が必要な奨学金を受ければ、借金を抱え込むことになる。
 生活保護世帯の場合は、貧困から抜け出すため高等教育を受けようとすれば、厳しい暮らしを覚悟しなければならないのが現状だ。
 大学などに進学する際の一時金支給など、支援策を含めた生活保護制度の見直し論議が進められている。学ぶ意欲によって苦しむことがないよう、後押しする方向で早急に改善するよう求める。
 生活保護制度の趣旨は、憲法に定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立を促すことにある。法では就学費として教材費、通学費、参考書やクラブ活動用の学習支援費、私立高の場合は無償の公立高に相当する額の授業料などの金額を決めている。
 一方で、保護を受ける要件として働くことができれば、能力に応じて労働すること、とある。高校卒業後に保護の対象から外されるのはこのためだ。
 「世帯分離」制度があり、条件によって保護費が減らされる。保護を受けながら大学などに進むことは認められていない。
 生活保護世帯の厳しさは数字が物語る。国の調べでは、大学や専門学校への進学率は、全ての世帯が7割を超えるのに対し、生活保護世帯は3割余りと半分以下だ。
 保護費は公金で賄われる。もちろん公正さが求められる。だが、子ども本人の責任が問えないのに、どこまで厳格に捉えるべきだろう。考える余地がありはしないか。
 自分に落ち度はないにもかかわらず、教育を受ける選択肢は限られ、学ぼうとすれば負担がのしかかる。そんな今の制度は、見直しが必要な時期にきているといえる。
 教育は未来への投資であるとよくいわれる。将来の社会づくりにつながるからだ。欧米にはこうした考え方もあるという。教育機会を確保することは、社会を支える人材を育むとともに、良き納税者を生むことにもなる―。
 生活保護はあくまで最低限度の保障を主眼とする。子どもが貧困から抜け出すために教育が必要なこととは、制度の仕組みが合わなくなっている面があるのかもしれない。
 衆院選では各党が教育無償化を打ち出した。政府は現在、高等教育などの無償化に関する制度作りを進めている。生活保護世帯の子どもが負担の重さに悩み、高校卒業後の進路に迷っている現状も、しっかり認識してもらいたい。
カテゴリー: 社説


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