2017.11.25 07:50

【ジンバブエ政変】平和裏に民主化を進めよ

 アフリカ南部の内陸国、ジンバブエで政変が起きた。
 37年にわたって長期独裁政権を敷いてきたムガベ大統領の後継をめぐる争いから、軍が事実上のクーデターを決行。大統領を「自発的な辞任」に追い込んだ。
 クーデターといえば、悲惨な流血の事態を想像しがちだが、今回はこれまでのところ大きな混乱は起きていない。これからの新体制は、来年行われる大統領選に向け、平和的な民主化を進めてほしい。
 ジンバブエは第2次世界大戦前に英自治領となり、その後白人強硬派政権の「ローデシア」が樹立された。黒人解放運動を率いてゲリラ戦を展開し、1980年に独立を勝ち取ったのがムガベ氏だ。
 だが「独立の英雄」も93歳となり、大統領を6期も務める中で、強権体質を見せ始めた。長期独裁政権にありがちなことだ。
 ムガベ氏はことし11月上旬、軍と太いパイプを持ち、後継者の一人と目されていたムナンガグワ第1副大統領を突然、解任した。そして後継者として浮上したのがムガベ氏の妻で、浪費癖で知られるグレース氏だった。
 軍はこの措置に反発し、国営放送局を占拠、首都に部隊を展開した。ムガベ氏は自宅軟禁下に置かれ、議会は同氏の弾劾手続きを開始した。万策尽きる形で「ムガベ支配」は幕を閉じた。
 独立当初は白人との融和政策を進めたムガベ氏だが、2000年代に入ると白人を敵視し始め、白人地主の土地を強制収用した。その結果、農地が荒廃し、財政政策にも失敗した。極度のインフレに陥り、経済は破綻状態だ。
 欧米にも敵意をむき出しにすることで知られ、経済制裁を科せられた。以後、両者の関係は冷え切っている。政変を後押ししたのは、困窮生活を送る国民の声でもあろう。
 当面は、ムナンガグワ氏が来年後半までだったムガベ氏の任期を代わりに務め、来年中に大統領選が行われる見通しだ。
 心配な点もある。ムナンガグワ氏は黒人解放運動の闘士の時代から、ムガベ氏の側近であり独立後も数々の閣僚も経験している。住民虐殺や不正蓄財、野党活動家の拘束や拷問など、数々の疑惑が指摘されている。
 次期大統領ともなれば、これまで弾圧してきた野党との協調や、崩壊した経済の立て直しなど、ムガベ政権の「負の遺産」と向き合わなければならない。強権体質が顔を見せれば、今は政変に好意的な欧米や、抑圧に耐えてきた国民の失望を招くことは必至だ。
 新体制はとにかく流血の事態を招くことなく、自由で公正な民主化プロセスを進めるべきだ。
 政権は長く続くほど腐敗やおごりに陥りやすい。これはどこの国にも当てはまる政治の格言である。「遠い国」の話だと、無関心を決め込んではいられない。
カテゴリー: 社説

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